第27話

「てか、なんでうちで酒なんか飲んでたんでしたっけ?」


「あぁ、それはですね……」


 愛奈は大石からコーヒーを貰い、昨晩の事を話し始める。





「……」


「……」


 大石は愛奈からの告白を正式に受けた後、照れ隠しに直ぐに教え子たちが待つ、クリスマス会に向かった。

 そしてクリスマス会が終了し、大石が家に帰宅するとドアの前で愛奈が待っていた。


「ほ、保永先生! 何してるんですか、こんな寒い日に!」


「あ、大石さん! おかえりなさい!」


 大石が愛奈に声をかけると、愛奈は嬉しそうに大石に笑顔を向ける。

 

「こんなに手冷たくして……早く家に入ってください!」


「大丈夫ですよ?」


「風邪ひいたらどうするんですか、保険の先生が風邪引いてたらもともこもないでしょ!」


 大石はそう良いながら、自分の部屋の鍵を開け、愛奈を部屋の中にいれる。

 エアコンとストーブに電源を入れ、大石はお湯を沸かし始める。

 

「とりあえずこれにくるまっててください」


「あ、すいません」


 大石は愛奈に布団を渡し、冷えた体を温めるように言う。

 コーヒーを入れ、大石は愛奈の座るソファーにコーヒーを持っていく。


「どうぞ」


「ありがとうございます」


 愛奈は大石からコーヒーをもらい、笑顔でお礼を言うとコーヒーの入ったカップを両手で包むようにして持つ。


「電話してくれれば、早く帰ったのにどうしたんですか?」


「え? あぁ……なんていうか……その……会いたくなっちゃいまして……いてもたってもいられず……」


「それで寒空のしたで待っていたと?」


「はい……」


 愛奈は頬を赤く染めながら、大石にそう話す。

 照れているのか、それともまだ寒いからなのか、大石にはわからなかったがそんな愛奈が大石はなんだか可愛らしく見えた。


「まったく……それで風邪をひかれたら困ります。今度からは事前に言ってください」


「えへへ、気が付いたらここに居まして」


 大石は愛奈の隣に座り、同じくコーヒーをすする。

 この時間なら大石は本当ならビールを飲んでいるのだが、愛奈が居るので流石にそれは飲まない。


「さて、それで何をしに?」


「え? あぁ……別に何も……ただその会いたかっただけっていうか」


「は、はぁ……そう言われても、私と会っても何も楽しくないと思いますが?」


「いえ! 私は楽しいです!」


 愛奈は目をキラキラさせながら、大石にそう言う。

 彼女の言葉に大石は笑みをこぼして愛奈に言う。


「じゃあ、映画でも見ますか? それともピザでも取って少し酒でも飲みますか?」


「両方で!」


「わかりました、じゃあ買い出しに……」


 大石がそう言って立ち上がると、愛奈が大石の手を握って大石を止める。


「どうしました?」


「私も行きます!」


「いや、まだ体が温まってないでしょ?」


「一緒に行きたいんです!」


「いや、でも風邪ひきますよ?」


「大丈夫です! へくっち!!」


「いや、思いっきりくしゃみしてるじゃないですか」


「それと! なんでまだ敬語なんですか!? ちゃんと愛奈って呼んでください!!」


 愛奈はそう言いながら、大石の腕に抱きつく。

 大石は仕方なく愛奈を連れて近くのコンビニに向かった。


「うぅ~寒いなぁ……」


「そうですか? 私は大石さんが居るから暖かいです!」


 愛奈はそう言いながら、大石の腕にしがみつく。

 

「あの……歩きにくいんですけど……」


「そんなことないですよ」


「いや、それは俺が決めることで……はぁ……」


 仕方なく大石はそのままコンビ二に向かい、酒とつまみを購入して愛奈と自分の部屋に帰ってきた。

 宅配のピザを注文し、大石はパソコンでビデオンデマンドのサイトを開いて、映画を選び始める。


「何が見たいですか? 見たいジャンルとかあります?」


「じゃあ、ラブロマンスで!」


「良いですけど、何か見たいのでもあるんですか?」


「これが良いです!」


 そう言って愛奈が指さしたのは、二年ほど前に公開された僧侶とOLのラブロマンスだった。

 大石はCMを見たくらいで詳しくは知らなかったが、当時は女性に人気のあった映画らしい。

 

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