第12話

「ん……あれ? 俺は……」


「よう、やっと起きたかよ」


「え? 那須? あれ? 俺は何を……」


 俺は八重を担いで近くの公園まで来ていた。

 八重をベンチに寝かせ、俺は八重が目を覚ますのを待っていた。


「お前さぁ……もう少し鍛えろよ、カッコ悪すぎ」


「な、なにを!?」


「ワンパンって……」


「う、うっせぇな! そ、そういえばあいつらは?」


「あぁ、多分まだ寝てる」


「え? って事はお前が?」


「だから、一人で十分だって言ったろ?」


 そうは言ったが、実際は結構ギリギリだった。

 八重が時間を稼いでくれなかったら、結構やばかったかもしれない。

 そんな事を考えていると、八重が俺に言ってきた。


「なぁ……なんで喧嘩するんだよ」


「売られるからだよ、俺から喧嘩なんて吹っ掛けてねぇ」


「でも、そんな喧嘩ばっかりしてたら、怖がられるまんまだぞ?」


「良いんだよ、俺は一人で……もう裏切られるのなんてこりごりだ」


「……俺は裏切らないぞ」


「は?」


 八重は真っすぐ俺の顔を見て、真剣な表情で俺にそう言った。

 そんな八重の言葉を聞いて、俺はどこか心のそこで八重を信じたいと思っていた。

 でも、俺は八重のその言葉をまだ信じることは出来なかった。


「……お前はもしかしたら、そうかもしれないな……」


 身を挺して俺を守ろうとしてくれた。

 結果がどうであれ、俺は八重のそんな行動がうれしかった。

 だから、こいつはあいつらとは違うのかもしれないとも思った。

 しかし、俺は完全に八重を信じることが出来なかった。

 俺は八重に背を向け、その場を後にしようとする。


「あ、おい! 行くのか?」


「あぁ、疲れた。じゃあな」


「おう! また明日学校でな!!」


 そういう八重に俺を振り返らずに手を挙げる。





「なぁ、那須! 宿題見せてくれ」


「あぁ? なんでだ」


「忘れた!」


「自分でやれアホ」


「わかんねーんだよ! 頼む!!」


 あの日以来、八重は前以上に俺に話をかけてくるようになった。

 大変はどうでも良いことばっかりだったが……。


「那須、お前は巨乳と貧乳どっちが好みだ?」


「いきなりなんだよ! ある方が良いに決まってんだろ」


「なんだと!! あんな物ただの脂肪の塊だぞ! 騙されるな!」


「なんで質問したんだよ! それと余計なお世話だ!」


 そんな事が続く中、八島以外のクラスメイトも俺に話かけるようになってきていた。


「ね、ねぇ……那須君……」


「あん? なんだ?」


「きょ、巨乳派って本当!?」


「初対面で何を聞いて来てんだよ」


「僕もおっぱい大好きなんだ!」


「いや、どんな自己紹介だよ! 薬でもやってそうな会話だな!」


 まぁ、大体はこんな感じの馬鹿な内容だったが、段々クラスメイト達からの誤解は解けて言った。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る