第11話
「クソッ! 結構きついな……」
「いくらお前でも、この数を相手にするのは厳しいだろ!! やっちまえ!!」
「先月の恨みだ!!」
ヤバイ!
そう思った時には、俺の体はワンテンポ反応が遅れていた。
俺の背後に木刀を持った不良が木刀を振り下ろし始めていた。
俺は攻撃を防御するために、腕を顔の前で交差させ目をつむる。
どん!
鈍い音がした、しかし俺の腕には何の衝撃も来ない、痛みも感じない。
様子がおかしいことに気が付き、俺は目を開けて様子を見る。
「なっ……」
「いてぇぇぇぇ!! 折れた! 絶対腕折れたぞ!!」
俺の目の前には俺の代わりに木刀を受け止める八重の姿があった。
「な、なにやってやがんだ! 逃げろって言ったろ!!」
「そんな事を言われても、友達を置いて逃げられないでしょ?」
「お、お前と友達なんてなった覚えはない!!」
「え? 違うの?」
「なんでそうだと思ったんだよ!!」
「いや、もう結構話たし……それに那須はそんな悪い奴じゃないから」
「え……」
八重はそう言いながらゆっくり俺に背を向け、不良たちと対峙する。
「お前に関する良くない噂が流れてるのは知ってるよ……でも、やっぱりちゃんと話してみないとどんな奴かなんてわからいから……それに、俺は那須が嫌いじゃないし」
八重はそう言うと不良たちに向かって構えた。
そして、深呼吸を一回して不良たちに突撃していく。
「おらぁぁぁぁ!!」
あの人数を相手に全くビビらず向かっていくなんて。
俺はこの時八重を少し見直した。
もしかしたらこいつはすごい奴なんじゃないかと、そうも思った。
「ぎゃん!!」
「なんだこいつ?」
「一発で伸びてやがる……」
違った、ただの雑魚だった。
八重は不良たちの拳一発で気絶し、地面に倒れた。
「だから言わんこっちゃない……」
だから逃げろと言ったのに……。
しかし、不思議と俺はその時の八重の行動が嬉しかった。
今まで自分を盾にして俺を守ってくれた人間なんていない。
今まで、俺のために立ち向かってくれた友達なんていない。
ある意味、八重はすごい奴だった。
「はははっ!! 那須! お前のお友達は面白いなぁ~」
「いやぁ~カッコいい、カッコいい~! 一発で伸びてたけど! あはははっ!!」
そう言って不良たちは八重の体を踏んだ。
それを見た瞬間、俺はどうしようもなく目の前の不良たちをぶん殴りたくなった。
「あぁ……そうだな……面白いだろ? ……じゃあ十分笑ったし……そろそろ寝るか?」
「はん! もうお前はかなり疲れてる! そんな状態で俺たちに勝てるわぎゃいん!!」
「うるせぇ……」
俺は立ち上がり、話ていた不良の顎めがけてアッパーを食らわせる。
「まずは一人だ」
「な! 那須の野郎! なんでまだあんな力が!!」
「もう相当体力は削ったはずなのに!!」
確かに疲れては居た。
しかし、なぜだか俺はやらなければという謎の使命感で体を動かしていた。
「お前らもううるせぇから……そろそろ寝ろ!」
その後はあっという間だった。
俺は不良全員を殴り飛ばし、八重を担いでその場を後にした。
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