第2話

「ねぇ……なんでこんな早くに起きてるのよ……起きて隣に居ないからびっくり……え!?」


 そう話ながらリビングにやって来たのは、部屋着姿のラフな西城だった。


「え? え? お、お前らまさか……」


「ち、ちちち違うんだ高志!! あれはその……西城じゃなくてだな……」


「いや、西城だろ……」


「ちちちち違うのよ!! 別にこいつの両親が家を空けるからって、別にクリスマスからこいつの家に泊ってたわけじゃないんだからね!!」


「へぇ……そうなんだ……」


「バカ! お前はもう何も言うな!! もろバレだ!」


「あ、安心しろよ……お前らには世話になったし、誰にも言わないから」


「た、頼む……」


「お、お願いします」


 もう言い訳も出来ないと思ったのか、二人は大人しくそんな事を言っていた。


「しかし、お前らもなんだかんだ言って仲良くやってるんだな」


「ま、まぁな……」


「そ、それなりによ……」


 西城は着替えを済ませ、赤西の隣に座った。

 高志は二人を見ながら、笑みをこぼした。


「な、なに笑ってるんだよ!」


「いや……なんか、良いなと思ってさ……俺、そろそろ行くよ。邪魔するのも悪いし」


「じゃ、邪魔なんかじゃないわよ! わ、私はこいつと二人きりで息が詰まりそうだったし!」


「はいはい、西城もあんまり強がらないでたまには素直になれよ」


「う、うるさいわね! 八重も紗弥を泣かせるようなことは、二度とするんじゃないわよ!」


「わかってるよ」


「あぁ、そういえば宮岡とはどうなったんだ? その様子だと仲直りしたのか?」


「……まぁ、仲直りしたんだが……」


「だが?」





「じゃあ、俺はこれで」


「おう」


「八重、ちゃんと紗弥と向き合うのよ!」


「あぁ、じゃあな」


 高志は二人にそういうと、赤西の家を後にした。


「あいつも大変だな」


「仕方ないわよ……それよりもお腹減ったでしょ? お昼ご飯作ってあげるわよ」


「え? 良いのか? 昨日から世話になりっぱなしだけど……」


「別にいいわよ、それにあんたまだ腕使えないでしょ?」


「ま、まぁそうだが……」


 赤西のギブスは昨日取れたばかりだった。

 まだ上手く動かすことが出来づ、時折西城に手伝ってもらっていた。


「さ、早く机を片付けましょう……あら? これは何?」


「あぁぁぁ! そ、それは!!」


 西城はそう言いながら、先ほどまで赤西が座っていた場所にあった紙袋の中身を取り出す。

 その中身の正体は、高志が赤西の為に持ってきたエロ本だった。


「な……あ、あんた……また……」


「ま、待て西城! そ、それは高志が!!」


 必死に弁明する赤西。

 しかし、西城はエロ本を見たまま固まり動かない。


「………ど、どうした?」


 思わず赤西がそう尋ねると、西城は寂しそうな表情で赤西に尋ねる。

 

「……私だけいれば良いって言ったくせに………」


「あ、いや……その……」


 いつもなら罵倒を浴びせながら殴り掛かってくる西城だが、今日は全く違う反応を見せた。

 赤西はそんな西城を見てドキッとした。


「捨てます」


 赤西は自然と西城にそう言っていた。





「さて、次は……」


 高志は次の目的の場所に向かっていた。

 次の目的地は駅前の喫茶店だった。


「お待たせ」


「あぁ、僕たちも今来たところだよ」


 喫茶店で待っていたのは由美華と泉だった。

 二人の目の前に座り、高志は店員にコーヒーを注文して二人に話始める。


「色々、迷惑かけたな……」


「いや、高志も被害者じゃないか」


「ちゃんと紗弥には謝ったの?」


「あぁ……最低だよな……俺」


「うん、最低」


「ちょっ! 御門さん! 高志も大変だったんだし……」


「悪いけど、私は今回の件は八重君も悪いと思ってるよ。紗弥がどんな気持ちだったか………」


「あぁ……そう言われても仕方ない……」


「……今回は紗弥が許したみたいだから私も許すけど……二回目は無いから」


 由美華は高志の顔を睨みつけながらそういう。

 紗弥との付き合いが一番長く、紗弥の親友である由美華にとって、今回の出来事は許せない出来事だったようだ。


「まぁまぁ、高志だって反省してるし、高志も被害者みたいなところあるし……」


「……もう泣かせないでよ……私が諦めてあげたんだから……」


「あぁ、悪い……」


 由美華の気持ちを少なからず知っている高志にとって、クリスマスの出来事は由美華も裏切るような結果になってしまった。

 由美華だけではない、高志はあの出来事にかかわった人間全員に改めて謝罪するために、今日はこうしてみんなのところを回っているのだ。


「はぁ! 私パフェ食べるから! 代金は八重君ね!」


「奢らせていただきます……」


「まったく! ちょっとお手洗い!」


 由美華はそう良いながら、トイレに向かった。

 

「泉にも迷惑かけたな……」


「あ、それとこれお詫びの気持ちってことで……」


「え? いいの? ちなみに何?」


「御門に似た女優が出てたAV」


「ぶっ!! な、なんで……そんな危険物を……」


 泉は受け取った紙袋を咄嗟に自分鞄の中にしまって隠した。


「いや、喜ぶかと思って」


「お詫びはもう少し考えてほしいよ……」


「じゃあいらない?」


「……もらっておく」


 やっぱり泉も男なのだと高志は思った。


「しかし、良かったよ、二人が仲直りしたみたいで」


「あぁ……まぁ、仲直りはしたんだが……」


「ん? まだ何かあるの?」


「いや、実は………」


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