甘え上手な彼女5 春?編

Joker

第1話

 クリスマスから二日が経過した。

 学校が休みに入り、高志は朝からとある場所に向かっていた。


「……まずは、こいつだよな……」


 高志が来たのはとあるマンションだった。

 玄関ロビーで部屋の番号を押し、高志はインターホンを押す。


「はーい、誰ですか?」


「……えっと、尋ねてきといて何なんだけど……誰?」


「あぁ! 八重先輩じゃないです!! どうぞ上がって下さい!」


「……なんで芹那ちゃんが?」


 高志は疑問に思いながら、マンションの中に入っていく。

 高志が訪ねたのは優一の家のはずだったのだが、なぜかインターホンに出たのは芹那だった。

 もしかして、芹那が遊びに来ているのだろうか?

 なんてことを考えながら、高志は雄一の家に向かう。

 ドアの前で息を吸い、高志は部屋のチャイムを鳴らした。


「はーい! 八重先輩、色々大変でしたね! ささ、上がって下さい」


「あ、ありがとう……あの優一は?」


「あぁ、優一さんは今調教中です」


「あぁ、そうか、じゃあ終わるまでま……ってちょっとまった、今なんて?」


 高志はリビングに通され、芹那に聞いた。

 芹那の言葉に高志が踊ろいていると、隣の部屋から物音が聞こえてきた。


「ん? 優一か?」


「あぁ、もう! けがしてるんだから、じっとしててって言ったのに!」


 芹那はそんな事を良いながら、物音のした部屋の扉を開ける。


「た、助けてくれ!! こ、殺される!!」


「もう、優一さんったらぁ~何を言ってるんですかぁ?」


「ひぃぃぃぃ!! 助けてぇぇぇぇぇぇ!!」


 バタン!

 少し開いた扉から優一の叫び声が聞こえてきた。

 一体中で何が起こっているのだろうか? 

 高志はそんな事を思いながら、芹那に恐怖を感じた。


「優一……死なないよな?」


 高志がそんな事を考えていると、再び部屋の扉が開き芹那と優一が出てきた。

 

「はぁ………」


「よ、よぉ優一……なんかやつれたか?」


「あぁ……ちょっとな……」


 優一は怪我をしていた。

 額や頬に絆創膏や湿布をはり、腕には包帯を巻いている。

 

「……悪いな……色々迷惑かけて……」


「別にいいよ、なんだ改まって気持ちわりー」


「今回はマジでお前のおかげだ、ありがとう」


「……なんだよ、調子狂うな……」


 高志と優一は向かい合い、話始めた。

 高志は今日、クリスマスの出来事について優一に謝る目的で来ていた。

 優一はクリスマスに瑞樹の家の執事長である伊吹と殴り合い、体はボロボロだった。


「あ、これお見舞い」


「あぁ、悪いな……なんだこれ?」


「エロ本」


「お前は神か……」


「いや、芹那ちゃんに全部捨てられたって聞いたから」


「あぁ、あの野郎、俺のお気に入りのコレクションを全部捨てて、SM系の本にすり替えやがったんだ」


「すり替えられたんだ……」


「今度は隠す場所を考えないとな……」


「そういえば、なんで芹那ちゃんが居るんだ? こんな朝から」


 高志はそう言いながら、キッチンでお茶を用意する芹那に視線を移す。


「あぁ、俺の看病だって、朝7時に来たんだよ……お袋が入れやがった……」


「それで、さっきは部屋で何をされてたんだ?」


「……聞かないでくれ……」


「そ、そうか……」


「それより、お前はちゃんと謝ったのか?」


「……うん……」


「んで、許してくれたのか?」


「まぁ……一応……」


「一応? また何かあったのか?」


「実は……紗弥が………」





「じゃあ、俺はこれで」


「お、おう……色々大変だと思うけど……頑張れよ」


「あぁ、ありがとう。そっちも早く怪我直るといいな」


 高志はそう言って優一の家を後にした。


「あれ? もう帰っちゃったんですか?」


「あぁ、あいつも大変らしい」


「まぁ、色々ありましたもんねぇ~」


 高志の背中を見ながら、優一と芹那がそんな話をする。

 高志はマンションを後にし、今度は別な場所に向かい始めた。


「次はあそこだな……」


 高志が次にやって来たのは赤西の家だった。

 家のチャイムを鳴らすと、直ぐに赤西が出てきた。


「高志! お前、大丈夫だったのか?」


「あぁ、おかげ様で……色々迷惑掛けたな」


「いや、俺は別に……色々やったのは優一だし……上がれよ、お茶でも出すぞ」


「悪いな……」


 高志はそう言いながら、赤西の家に上がり、リビングで話を始める。


「あれ? 赤西のお袋さんは?」


「あぁ、二日前から旅行でな……今日の昼に帰ってくるんだ」



「そうか、じゃあ一人だったのか」


「あぁ……ま、まぁな……」


 口籠る赤西に違和感を感じながら、高志は赤西に持ってきた紙袋を渡す。


「なんだこれ?」


「いや、色々迷惑をかけたからな……お礼だ」


「そんなの気にしなくても……大変だったのはお前だろ?」


「でも、結局は全部、ハッキリしない俺のせいだからな……中はお前好みのエロ本だ」


「ゴットかお前は……」


「お前も西城にエロ本捨てられたんだろ? 今度は上手く隠してくれ」


「悪いな、あいつは俺の部屋を一日掛けて家宅捜索して、隠していたエロ本30冊を燃やしやがった……」


「西城は結構やることがすごいな……」


 高志と赤西がそんな話をしていると、誰かがに階段を下って来る音が聞こえてきた。


「ん? お前以外誰も居ないんじゃないのか?」


「あぁ! いや……その……」


 

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