忘れられない光景
声のする方、右側に振り返るとそこには、おなじくらいの少年がいた。
「あ、うん。迷子になっちゃった」
「あはは。えらいね。泣かないんだね」
こんなとき、泣いてもいいんだという認識が私にはなかった。
誰かに会えて安心して泣き出す、なんて可愛い子どもじゃなかった。
今思えば可愛げがなかったかもしれない。
「オレは
「私は
「ねぇ、マイカ。今から特別なお祭りを見に行くんだ。一緒に見ようよ」
私の心臓がはねる。
「見たい! 」
「おいで」
ルキは私の手を掴み、右の道を進んでいく。
特別なお祭りってなんだろう。
花火かな? たくさんの人とマイムマイム? ワクワクしていた。
「ここだよ」
連れられて来た場所は──出てきた場所が平坦過ぎてわからないけれど、右を向いて見える範囲の先──透明で、小さな私には大きく感じる場所。頭上高く、真っ白い太陽に反射して見えた光のシルエットは、鳥かごのようにみえたんだ。
透き通って、太陽の光が、見る角度によってはビー玉の中みたいに逆さまに見えたりして。
触れるとひんやり冷たい。
「キミはここに来れたから、キミも特別だよ」
こちらを向き、イタヅラっぽく方目を瞑った。
……乙女ならキュンってなるはずがならなかった。
───ずーーーー……………ん。
ウインクが合図だったのかはわからないが、ものすごく揺れた。
タイミングよく頭上に──うっすら鳥かごのように見える透明な何かのてっぺんに──何か落ちてきた。
高すぎてわからないけど、重い、暗い鈍い色をして、オブジェか何かのように鎮座している。物理的に。
「しっかり見て。始まるよ」
ルキが私の隣で、私の手を握っていた。
こういうシチュエーションなら、セオリーならば彼にドキドキする、はず。
けれど、何かあれば走り出す私を抑えてくれているんだ的な事をあの時考えていた。
ああ、なんて色気のない。
思い出はクライマックスを迎える。
今思えば、あれは大きなガラスドームだった。
重い音がして、浮いて底が見えた。
まるでスチームパンクのような大きな歯車が浮きながらゆっくり回り出す。
歯車の回転を見ていると、中で何か動いた。
顔をあげると、白鳩が一匹……その瞬間、ドームいっぱいに白鳩が飛び回る。
視界が真っ白になると舞う羽だけになった。
「……最後、よーく見てて」
耳元で囁かれます。
3度めの胸キュンシチュエーション。
すべて台無しにした私。
最後と言った瞬間、四方八方からキラキラしたものが飛び出した。
緩慢になると見えた。たくさんの金色のお星様が散らばっている。
感動で目を見開いたまま固まってしまった。
すると、全体が重そうに少し下がる。
てっぺんの重いものが見えた。大きな鳥のオブジェだ。
しかしそれは羽を動かし始めた。
高く飛び上がり、太陽の光に紛れて眩しくて目を閉じてしまったんだ。
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