第24話 二人のHKL

その日の夕飯は、イワシのつみれ汁と野菜炒めとブタロースの生姜焼き。


慎一は、あまり美味しさに顔が緩みっぱなしで、夢中になって食べる。


「レイレイ、こ、このつみれ汁、最高!

 最近、魚料理なんて、会社の飲み会で出てくる刺身くらいしか食べていなかったから、尚更だよ。

 しかも、魚、さばくことも出来るんだね。」


「また、レイレイって。

 イワシは柔らかな魚なので、さばくのは簡単ですよ。」


「でも、頭落として、内蔵取って、血を洗い流して、皮まで剥いていただろ?

 なかなか、出来ないよ。」


「うふ、ありがとうございます。」


玲子は慎一に称賛され、ご満悦だった。


「この生姜焼きのロースも、スーパーで買った庶民向けの肉だろう?

 それがこんなに柔らかいなんて。

 あのトンカチを使ったから?」


「トンカチって。

 ミートハンマーですよ。

 筋や繊維を切ってくれて、肉が柔らかく、おいしくなるんですと。

 力もそんなにいらないので、私でも十分柔らかくなります。」


「へぇー」


(素材だけじゃなくて、道具と腕なんだ)


高級な素材だけでなく、一般的な素材をも、上手に美味しく料理する玲子の腕前に感心しきりだった。


料理の腕前だけでなく、明るく笑顔を見せ、どんな話題にも話しを合わせ楽しそうに会話する玲子。


慎一は、いつしか自分と釣り合わないと卑下することはやめて、玲子との時間を楽しむことに専念することに決めていた。


「そうだ!

 ワイシャツのお金を払わないと。

 いくらだった?」


「え?

 ええ、えーと。

 あのワイシャツ、セールで安く売っていたのですよ。

 気に入ってもらえましたか?」


「もちろん。

 今までの白無地のワイシャツと交互に着て行くよ。

 だから、1着は、明日着るよ。」


「そう言うと思って、アイロン掛けたワイシャツを交互につっておきました。」


「おっ、サンキュー!」


「それと、あくまでも私の主観で、ネクタイもワイシャツとの組み合わせで並べて見ました。

 でも、それは慎一さんの好みで替えてくださいね。」


「わかった。

 ありがとう。」


世話好きの女性を奥さんにすると、こうなるのかと、つくづく思いながら、鼻の下を伸ばしていた。


「そうだ、慎一さん。

 私と慎一さんのスマホに位置を知らせるアプリをいれませんか?」


「え?

 位置を知らせるアプリ?」


食後に慎一まったりとしているのを見計らうように玲子が話し掛ける。


「そう。

 お互いが、今どこに居るかを教えてくれるアプリです。」


「なんで?」


「ほら、私って方向音痴なの。

 だから、外で慎一さんとはぐれてしまった時のためです。」


「あれ?

 レイレイって方向音痴だっけ?」


「そ、そうですよ。

 知らなかったのですか?

 大学に行くつもりが、みなとみらいに行ってみたり、結構、やらかすのですよ。

 当然、慎一のスマホに私の位置情報も登録しますし、二人で出掛ける場合以外は停止させておいて構いません。」


「ふーん。

 まあ、レイレイがそうしたいなら、俺は構わないよ。」


何の警戒心もなく、慎一は自分のスマホを玲子に渡す。


「え?

 慎一さん、スマホに認証設定していないのですか?

 顔認証とか、指認識とか、せめて4桁の暗証番号くらい設定しましょうよ。」


「いや、いいよ。

 面倒くさいし、覚えていられないよ。

 誕生日はダメとか、郵便番号や電話番号などは駄目だろ?

 会社でもパソコンやロッカーに暗証番号使っているからこんがらがる。

 だから、面倒くさくてやっていないんだよ。」


「まあ、今は設定しなくてはならないものが多いですよね。

 でも、私のアドレスとか慎一さん以外に知られたくないし。」


悲しそうな目をする玲子に慎一は慌てる。


「わかった。

 そうだよな。

 落としてレイレイの情報が知らない男の手に落ちたらいけないものな。

 じゃあ、まずは4桁の数字を。

 うーん。

 よし、0101(レイレイ)にしよう!」


「た、単純!

 それに、レイレイって…」


玲子は、慎一に聞こえないように呟く。


「何か言った?」


「ううん、何も」


(まあ、開けっぱなしよりは良いわね)


玲子は慎一からスマホを渡されると、自分のスマホと両方に同じアプリを入れて設定する。


「はい、設定まで終わりです。

 このアプリを立ち上げれば、登録されているスマホの位置情報が見えます。

 今は、ほら、同じところにいるから同じ場所をさしています。」


慎一が見ると、地図の上に明るい星マークが出ていて、場所も確かにこのマンションをさしていた。


「便利なんだね。」


慎一はアプリを終わらせて、スマホを閉じる。


(よし!)


玲子は、つねに位置情報を発信する設定に慎一のスマホを設定してあり、慎一は設定をいじらずに閉じたことをチェックしていた。




それから、玲子は週半ばの1、2回、大学の帰りに慎一のマンションに立ち寄って、手作りの菓子を届け、夕飯の支度をして帰る。


日曜日だけの契約だったのに、いつしか、土曜日も玲子が来るようになり、慎一を喜ばせていた。


土日のどちらかは、本当の恋人のように山下公園やみなとみらいなど横浜をぶらぶらと遊びに行く。


ハウスキーパーとしての仕事もこまめにこなし、かつ、慎一のコーディネーターとしての腕もふるっていた。


男女間は、土日の連日もしくはどちらか、お互いどちらからともなく、求め合う。


特に玲子は日増しに慎一と触れ合うのに幸福感が強くなっていくようだった。



「ん…」


(いやだ、声が出ちゃいそう)


慎一も、玲子が感じる体の部分がわかってきたのか、新しいところも開拓しつつ、喜ぶ部分は手厚く愛撫する。


(えっ?

 何をするの?)


慎一は、口と舌で玲子の胸からおへその辺りまで下げていくと、そこでやめ、少し間が開いたあと、体勢を玲子の足下にずらし、玲子の両脚を開かせる。


慎一の眼下で玲子の女性が露わになる。


(いやだ。

 慎一さん、恥ずかしい)


自分の女性を慎一に見られているかと思うと玲子は恥ずかしかったが、それと比例するように体の芯が熱くなるのを感じる。


慎一は指の腹で優しく円を描くように玲子の女性を撫で回すと、玲子は恥ずかしさと、気持ち良さで顔を横に向け、眼を閉じてじっと耐えているようだった。


慎一は、更に玲子の脚を開かせると太腿の内側にむしゃぶりつく。


突然のことで、玲子はからだに力を入れるが、慎一は構わず、左右の太腿の内側を真ん中部分から女性に向かってしゃぶっていき、そのまま、舌で女性の突起部分に触れ、舌先で刺激する。


「あっ!」


(そんなところ、ダメ!

 慎一さん、やめて)


思いと裏腹に玲子は慎一の頭を掴み、前屈みになりながら、まるで自分から慎一の顔を自分の女性に押しつけるように力を入れる。


(どこにも行っていないのに、なんでこんなことが出来るの!

 どこでこんなこと覚えたの?!)


玲子は、よく慎一のスマホの位置情報を確認していたが、想像していたお金で女性を買ってテクニックを磨いていることは、見てとれなかった。


(なんで。

 いや、頭が変になっちゃう)


慎一は、構わず舌先を女性の中に入れて刺激したり、突起やその周辺を舐め回す。


玲子の頭の中は、新たな刺激でパニックになっていた。


体の中から何か熱いものが溢れ出すが、全て慎一に舐め取られている気がして、それが恥ずかしいのやら、気持ちいいのやら、色々なものが混じり合い、快感となって玲子を襲う。


「い…」


(いや、いやー。

 おかしくなっちゃう。

 慎一さん、早く来て!)


聡明な玲子の頭の中が、迷走し始め、体を後ろに反らせる。


慎一は、上半身を起こし、男性の狙いを玲子の女性につけると、一気に奥まで埋めていく。


始めこそ、抵抗があったが、直ぐに柔らかな玲子の中にすんなりと入っていく。


(あ!

 そんな奥まで…)


玲子は歓喜で体の震わし、慎一にしがみつく。

少ししてしがみついている玲子の力が弱まると、慎一は力強く腰を動かし、男性を玲子の奥深くまで差し込んでは、とば口まで抜き、また、奥深くへと情熱的に動かす。


小柄な玲子は慎一が奥まで差し込むと、それに呼応するように顔を反らすようにして布団の上をずり上がる。


ベッドの柵に頭がぶつかりそうになると、慎一は玲子の腰を掴んで、ずり下げ、また、続ける。


慎一は、玲子の両脚のふくらはぎを両手で抱えるようにして、玲子の奥深く差し込んでいく。


そして、その動きがだんだん早くなり、慎一は、玲子のふくらはぎから手を離し、覆い被さるようにして、両手で玲子の首の後ろから頭に掛け、玲子がずり上がらないように固定すると、激しく腰を動かし、男性を差し込む速度を上げる。


玲子は、慎一の男性の突き入れてくる衝撃でずり上がろうとするが、慎一に押さえ込まれ、か細い体は一身に慎一を受け止めていた。


体の中を駆け回る慎一の男性の感覚と、押さえ込まれ身動き出来ず慎一に蹂躙されていると思う感覚とで、玲子は冷静さを失って、必死になって慎一にしがみついている。


「れ、玲子」


慎一は爆発寸前で玲子の名前を呼ぶ。


玲子もしがみつきながら、懸命にうなずく。


そして、慎一はこれでもかと言わんばかり、玲子の中に注ぎ込んだ。


その時、玲子は小刻みに震えたようだったが、慎一が静かになるまで、しっかりとしがみついていた。


慎一は小さく息が吐くと玲子の唇に優しくキスをする。


それが合図のように、玲子も体の力を抜き、もう一度、慎一は玲子を抱きしめると、そっと体を離す。


玲子は、この抱きしめられるのが好きだった。


慎一が離れると、二人は見つめ合い、笑みを交す。


そして玲子は、体にシーツを巻いて、シャワーを浴びに行く。


その後、必ずシーツを洗うのだが、一度、慎一は洗わなくてもいいと言ったが玲子は頑として譲らなかった。


(うふふ。

 慎一さんたら、たくましいなぁ

 幸せ)


玲子はシャワー浴びて浴びながら思い出したように、微笑む。

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