第20話 私の中のあなたの存在
玲子は、女性の中の慎一の男性がビクッビクッと痙攣したように動いたのを感じた。
「え?!」
「ごめん。
いった。」
「うううん。
大丈夫。
でも、痛いのを抜いてくれますか?」
「ああ、ごめん」
慎一は、そっと玲子の女性から、自分の男性を抜く。
「?!」
玲子は、女性から出た慎一の男性の形状を見て、驚愕する。
(あんなのが私の中に?
どうりで奥まで痛いと思ったわ。
本で読んだ標準より大きいじゃない。
お姉様が言ったように、そのうちに気持ち良くなるのかしら。
あっ!)
玲子は女性の中から何かが溢れ出るのを感じた。
「慎一さん、シーツを貸してくださいね。」
「え?」
「ちょっとごめんなさい。
お尻を上げて。」
玲子は器用にシーツを剥がすと、折ってロングタオルのように裸の体に巻き、ベッドから降りる。
「慎一さん.シャワー貸してくださいね。」
「ああ、自由に使って。
風呂を入れても構わないから。」
「ありがとうございます。」
玲子は、満足したように呆けている慎一に笑みを浮かべながら服や下着を持ってシャワーを浴びに行く。
洗面所の奥にあるバスルームに入ると、まず、体を洗う。
女性から慎一の男性から注ぎ込まれたものと自分のものが混じったものが滲み出て、べたべたして気持ち悪かった。
また、体中に付いている慎一の愛撫の残りも綺麗に洗い流す。
(まだ痛いし、べたべたしたもので気持ち悪いな。
本当に良くなるのだろうか。
はぁ、何か最悪。
…
でも、慎一さんのだからいいや。
それにきっと気持ち良くなるわ。
きっと。)
痛みを覚えながら複雑な思いを巡らす玲子。
(うおー、やってしまった。
あんな美人で可愛いい子と、しかも、何もなしで。
サイコー!
滅茶苦茶、気持ち良かった。
しばらくは手も洗わないで、シャワーも浴びないぞ。
でも、レイレイは痛かったかなぁ。
少しは、気持ち良かったかなぁ。
俺、早くいき過ぎたかな。
次はもっと長続きするように頑張らなくちゃ。)
慎一はティッシュで男性を拭うと、うっすらピンク色に染まったのを見て、感激する。
(本当に、初めてだったんだ。
ヤベー、もうサイコーだぞ。
これからは、もっともっと優しく、大事にしなくちゃ。)
初めての男として相手を自分の好き勝手に出来るという誤った征服欲より優しさが前面に出てくる慎一だった。
玲子が洗面所に入ってから、しばらくして洗濯機の回る音がして、玲子が出てくる。
玲子は、訪ねて来た時と同じように、ワンピースを着て綺麗に身支度を整えていたが、顔はシャワーのせいなのか、はたまた、慎一と体を合わせたせいなのか、ほんのりと紅をさしたように赤く上気していた。
「先にシャワーを使わせていただき、すみません。
慎一さんも、どうぞ。」
「え?
俺はいいよ。」
(せっかくのレイレイの香りが付いた体を洗い流したくないから。)
「ええー?!
ダメですよ。
綺麗にして来てください。」
玲子は自分の体から出たものが付いているはずなので、恥ずかしいのも手伝い慎一にシャワーを勧める。
「いや、いいって。
せっかくのレイレイの…が取れちゃうといけないから。」
慎一は思わず口を滑らす。
「な?!
何ですって?
私の何がですって?!
こ、このド変態!!」
玲子は自分の体から出たものをつけたままにしたい言っているのかと美しい程誤解をする。
玲子の剣幕にたじろぎながら、慎一は懸命に言い返す。
「い、いや、それもあるか…」
「ほら、この変態!
正体を現したな。
女性の敵!!」
「いや、違うって。
そうじゃなくて、レイレイの甘い香りが飛んじゃうってことだよ。」
「私の…香り?」
意外だったのか、玲子は大人しくなる。
「そうだよ。
俺の体に残っているレイレイの甘い香りがシャワーで流れるから、しばらく洗わないでいたいって思っただけだよ。」
「私の甘い香り?」
「そうだよ。
レイレイっていつも良い香りをさせているじゃない。」
「そうですか…?」
玲子はまんざらではないと言う顔をする。
「まぁ、でも。
やっぱり、シャワーを浴びてくださいね。」
「えぇー」
「もう、匂いくらい、いくらでも嗅がして上げますから」
「やったー!」
「え?」
「ん?」
「…」
「…」
二人は、何か変態チックなやり取りをしたことに気がついて気まずく黙り込む。
「うん!
じゃあ、シャワーを浴びてくるか。」
慎一がその場を取り繕うように咳払いをして布団から立ち上がる。
「き、き、き、きゃー!
な、な、なんで、全裸なのですか?!」
一糸も纏わぬ慎一の姿を見て、玲子は顔を真っ赤に染める。
「え?
だって、さっきのままだから…」
「トラ、トランクスくらい履いてください。
この露出狂!」
「そんなこと言って。
自分だって、さっきは裸だったじゃないか。」
「シーツで隠しました。」
玲子はそう言いながら、手近にあった慎一のトランクスや服を投げつける。
慎一はそれらを掴むと洗面所から逃げ込んだ。
「まったく、もう。
信じられないわ。
男の人って、みんなあんな風に露出狂なのかしら。」
玲子はぶつぶつ言いながらもどこか楽しそうに、新しいシーツを出して、布団の上にひく。
布団は、まだ乾燥機のせいか、温かくふかふかしている。
「ちょっとだけ。」
玲子は服のまま、布団にうつ伏せで倒れ込む。
まだ、女性の辺りに痛みが残っていたが、緊張から解き放たれたせいか、布団のせいなのか、うつらうつらと転寝し始める。
慎一が洗面所から出てきたときには、ぐっすりと眠っていた。
「あれ?
寝ているのか?」
慎一はベッドの上で気持ち良さそうに寝ている玲子に気がつき、顔を覗き込む。
「まったく、寝顔も超反則級に可愛いよな。
アイドルデビューすれば、たちまち人気の的、センターになること間違いなしだな」
ベッドの端に腰掛け、慎一はまじまじと玲子が顔を見ていた。
そして何を思ったのか、自分のお腹周りを見る。
「鍛え直さないと。
この子に嫌われたくないからなぁ。」
それから、30分ほど経ち、洗濯機が洗濯終了のブザーを鳴らす。
その音で目が覚めたのか、玲子がゆっくりと上半身を起こすが、寝ぼけているのか、自分のベッドでないことに気がつき、周りを見渡すと、微笑んで玲子を見ている慎一の顔があった。
「え?
慎一さん、なんで?」
「う〜ん、そこまで寝ぼければ完璧だな。」
「そうだ!
私、眠ってしまったのね。
今の音は、洗濯機が終わった音。」
玲子はしっかりと目を覚ましたようだった。
「乾燥機にかけないと。
あっ!」
起き上がった拍子によろけて、玲子は慎一の腕の中に倒れ込む。
「ご、ごめんなさい。」
「平気だけど、レイレイは大丈夫?」
「はい。
でも、またその呼び方をする。
慎一さん?」
慎一は玲子をしっかりと抱きしめて離さなかった。
「慎一さん…。
まだ痛いの。
今日は勘弁してください。」
「わかっている。
少しだけ、玲子を抱きしめていたい。
それに、さっき、匂いを嗅ぐくらいならいくらでもって言っただろ?」
慎一はウィンクすると、玲子の首筋に顔を埋める。
「もう、慎一さんたら。」
玲子はそっと慎一の頭に腕を回すと自分のほうに引き寄せようにして、抱きしめると、なんとなく幸せな気分になった。
その日は、大丈夫だから家事をやると言う玲子を押し留め、慎一が甲斐甲斐しく働く。
働くと言っても、ケーキを買いに行ったり、夕飯にとケンタのチキンの入ったパックを買いに行ったりするくらいだったが、玲子は恐縮しながらも、素直に喜んでいた。
それで夕飯を済ませ、後片付けをした後、慎一は駅まで玲子を送る。
マンションの玄関を出ると、二人は自然に手を繋ぎ、楽しそうに歩き、改札口で別れる時は、どことなく寂しそうな顔をする。
二人の仲は急速に縮まったようだった。
マンションに戻った慎一は、玲子の置いていったクッキーを摘む。
クッキーは甘く、まるで玲子のようだった。
「本当に?
本当に俺はやったのか?!
あの美人で可愛いレイレイと一線を超えて。
恋人?
いや、待て。
HKLだから仮想愛人か。
でも、それでもいい。
あんなに良い子が傍にいてくれるなら。
いい匂いを独り占めできるのなら。
俺は幸せだあー!!」
慎一はベッドに倒れ込む。
そこは玲子が転寝していた所で、玲子の匂いがした。
慎一はひたすら、玲子の匂いがするところを嗅ぎまくり、仰向けになって両手で握り拳を作ると、その手を天井に向けて、満面の笑みを浮かべ、しかし、大声を出したいところを必死で抑えていた。
一方、玲子は痛みも治り、ご機嫌だった。
理由は、行為の後の慎一の気遣いと優しい態度のせいだった。
「今思えば、そんなに酷い痛みじゃなかったかしら。
その前に慎一さんに気持ち良い思いをさせてもらって、充分に潤っていたからかしら。
慎一さん、女性経験がほとんどないと言っていたけど、本当かしら。
優しいし、気持ち良かったし…。
でも、あんなに奥まで入って来るとは思いもしなかったな。
びっくり。
なによりも、あの後、まるで王女さまを扱うみたいに親切です、優しくしてくれて。
やっぱり、いい人だなぁ」
玲子の中では、慎一の存在がどんどんと大きくなっていった。
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