番外編 あの星を見つけた

こちら、今回の「SkyDriver in the Rain」と別作「星鳴きの森」、どちらとも関係のあるお話となっております。

どちらを読んでいなくとも、分かる内容となっておりますが、気になった方はぜひ「星鳴きの森」の方もよろしくお願いします🙏


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 雨。

 私はそっと窓から外を眺めていた。

 臥せった台の上から眺める空には、雲が立ち込め、とても暗く、月光さえも見えない。

 そう、そのときは夜だった。

 ポツポツポツッと雨粒が窓の桟を叩く。窓ガラスを叩く。

 さみしいと感じた。私は右手と左手を丸めて、目に当て空を覗く。いつもこうして、空を眺めるのだ。悲しいときは、こうして覗き込むと、星たちが視界の孤独を癒してくれる。

 母さんが私の姿を見たら笑うかもしれないが、いつまで経ってもこの空を見たいという気持ちは変わらないようだ。雲の切れ間を探す。糸に引かれているように気がせいた。


「あ……」


 切れ間が、あった。

 雨粒が邪魔をする。けれど、身体が弱く、延々と空を見上げ続けている私にはあれがどの星か、季節と時間と位置とで分かる。


「あれは夏の大三角形、……デネブ、……アルタイル、……ベガ。あそこにあるのは……」


 ぶつぶつと呟きながら、頭の中に描く星の地図を追う。


「あれは……。あれ?」


 さそり座を示すアンタレスのすぐそばにそれはあった。

 じいっと、目を極限まで凝らさないと見えないくらいに小さく弱い光を放つ星。

 ランプの光で反射した雨粒の光ではない。

 ザぁ――――・・・・・・。

 雨脚が強くなり、雲が立ち込める。その星は見えなくなってしまった。

 しかし私は、始めてみた星の光を目に焼き付けて、思いっきり息を吸う。

 陶酔し切った顔をだらしなく緩ませて、星のすべてをえがいた書籍をあさり、自分の見解が正しいことを確かめた。


「あの大きさと言い、私はやっと仲間を見つけたのか」


 誰かに伝えるのは後でいい。今は疲れたから休もう。

 私はそう考えて、枕に頭を預けた。

 あの日、あのとき見つけた星は、後に私が「セイジ・イフェマラル」と名付け、消滅したのちも、宝玉のような形で残ることを、当然ながら、ただの体が弱い私には知る術もなかった。


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SkyDriver in the Rain 紫蛇 ノア @noanasubi

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