第4話 王子は飛び出す
これは、一日だけ彼女に会いに行けなかった日の話。
いつものように彼女に会いに行こうとこっそり白を抜け出そうした時の事だった。
「王子。少し、お時間よろしいでしょうか?陛下がお呼びです」
嫌な予感がした。きっと、あの話だ。
「分かった」
「失礼します。陛下。王子を連れてまいりました」
「うん。ありがとう。下がっていいよ。2人で話がしたいから」
父さんがそう言うと部屋から誰もいなくなり僕と父さんだけになった。
「さて、なんで呼ばれたかは…分かってる…よね?」
「さぁ。僕には分かりません」
「そうか…お前は皆に嘘をつくのは上手だけど父さんにつくのは下手だね。それとも…これが反抗期、というやつなのかな?それならそれで父さんとしては嬉しいけど、国王としては…嬉しくないね」
「早く本題へいったらどうですか?」
「まぁまぁ。そんなに急かさなくても。それとも何か用事でもあったのかな?」
「いえ…別に…」
「ふふ。本当に君は…。まぁいいか。よし。じゃあお待ちかねの本題へいこうか。先週僕が話したことは覚えてるね?考えてくれたかな?」
「えぇ。まぁ。考えましたよ」
先週。父さんに結婚の話をされた。
国の利益になるための結婚の話だ。相手の子もそれを知っているが、本当に僕のことが好きらしい。
「そうか。じゃあ答えを聞かせてもらおうか」
「答えは、もちろんNOです。僕は彼女とは結婚しません」
「…どうしてかな?」
「彼女が国のためでなく本当に僕を好んでくれて好意を寄せてくれているのは嬉しいです。けど、僕にそういった感情はありません。それに、僕にだって選ぶ権利はあるはずです。彼女が僕を本気で好いて結婚したいと言ったように、僕にだってそう思える人と結婚する権利はあるはずです。僕はそう思える人と結婚したいです。国のために自分の感情を殺したくはありません」
「うん。正論だね。そして随分、父さんに色々言えるようになったんだね。嬉しいよ。でも、国王としては嬉しくないね。それと…もしかして、というかお前も気づかれてることには気づいていたと思うけど…お前、今好きな人、いるんだね?」
やはり、気づかれていた。正直色々考えたが何をしても父さんにはお見通しだと思って下手に隠すために色々行動するよりそういった工作はしない方がいいと思って特別なことはしていなかったんだが…。
「当たりみたいだね」
父さんの笑顔はとても怖い。正直同じ人間の笑みとは思えない。口角は上がっているものの目が全く笑っていないし心も笑っていない。ずっと真っ黒いなにかに覆われているような笑顔だ。姫様の笑顔とは大違いだ。
「だとした、何か問題があるのでしょうか?先ほど言ったとおり僕にだって権利は」
「うん。権利はあるよ。それはもちろん誰にだってあるよ。君だけじゃなく、全人類に共通してあるよ。その権利は。でもね、いくら権利があっても…それを許す人がいるかな?君が誰を好きなのかは敢えて言わないよ。知ってはいるけどね。僕も許さないしきっと…国民も許さないだろうね。それとも、君…いや、お前は自分の生まれた国にいる人間、その全てに逆らってでもその子と一緒にいたいのかな?」
今まで感じたことの無い恐怖が襲ってきた。初めてだ。父さんがこんなにも怒ってるのを見たのは。
でも、僕はもうずっと前から決めてんだ。何があっても彼女を守る。彼女の傍にいる。と。
「もちろん。国どころか世界中の人間に許されなくても僕は彼女の傍にいます」
「そうか…。ずいぶん、彼女のことが気に入ったようだね。あんな呪われた娘のどこがいいのか、私にはさっぱり分からないが…」
その言葉を聞いて一瞬頭に血が上った。
抑えろ…。冷静に…。落ち着いて…。
「父さんに…分かるはずないよ。父さんに…呪いを持つ者の苦しみが……彼女の苦しみが…分かるわけない。仕事のことしか頭にないあんたに、あんたなんかに…」
僕はそう言って城を飛び出した。
そして、国からも僕は飛び出した。
呪い ぺんなす @feka
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