第2話 呪われた王子様
「不死身……」
「そう。だから、僕は…死にたくても、死ねないんだ」
それまで、笑顔を絶やさなかった王子様が、その言葉を発する時だけは、表情を曇らせました。
その表情を見て、お姫様はどのような言葉をかけたらいいのかわからなくて何も言えなくなってしまいました。
ですが、王子様の表情は明るいものに戻りました。
「でも……今日初めて生きててよかったって思いました。貴方に出会って、初めてそう思えました。お姫様、ありがとうございます。僕に生きる希望を与えてくれて」
王子様はお姫様の手を握り、それはそれはまぶしい笑顔をお姫様に向けるのでした。
その言葉、そして王子様の笑顔を見て、お姫様はうれしくなりました。
「そんな風に言ってもらえるなんて…私、とっても嬉しいです…‼初めてです。目を合わせて、喜んでもらえたのは……」
お姫様はうれしくなって泣きそうでした。
「泣かないでください。お姫様。僕だけが見れる貴方の笑顔を見せてほしいです。いつでも僕が合いに来ます。ずっとずっとあなたのそばにいます。だから…涙なんて流さないでください。笑顔のほうが姫様には似合います」
王子様は、姫様優しいまなざしを向け、姫様の心を落ち着かせました。
「ありがとうございます…。嬉しくて、つい涙が出てきてしまうのです。でも、もう大丈夫です。王子様、優しくしてくれてありがとうございます‼それから…ほんとに、また会いに来てくれますか…?」
「もちろん。明日も明後日も、毎日毎日会いに来ます。貴方に寂しい思いはさせません」
こうして、呪われた目を持つお姫様と呪われた命を持つ王子様は出会ったでした。
ですが、多くの人々は二人の関係を許しはしませんでした。
呪われた者同士の恋愛…。
現状で、それを許してくれるものはいないでしょう。
王子様はそれを察していました。
王子様は、姫様の国から自国へ帰る道でずーっと考えていました。
自分の気持ちをだれにも知られてはならないと。
王子様の気持ちは姫様にだけ知ってほしい気持ちでした。
もし、姫様以外の人間に知られてはきっと、もう二度と姫様には会えなくなるでしょう。
王子様は、内緒で姫様のもとに行くことを決めました。
それと同時に、もう一つ。
もし気づかれてしまった時のことも考えました。
そんなことを考えていると、もうお城についていました。
「おかえりなさいませ。王子。ご無事で何よりです」
「あぁ。ただいま」
「やはり、呪いの目でもダメだったのですね。私としては王子が無事でうれしいのですが…」
「もう、死ねないことをいちいち気にしたりはしないよ」
「そう、ですか。もう少し落ち込んでいるのかと思いましたが…」
「……呪いの目でも死ねなかったのは残念だけど、また別の方法考えるよ」
王子の表情が心なしか明るいように見える。
あの姫に対して何かしらの感情を抱いていないといいが…。
とりあえず、そこも含めて後で陛下に報告しよう。
多分、ほんの少しの違和感を感じているだろう。
なるべく早く、姫様とのことを考えないと。
僕のせいで、姫様を傷つけるわけにはいかない…。
姫様を守れるのは、僕しかいないんだから。
僕だけが見れる、あの笑顔を…必ず、守らなければ――。
こうして王子は、姫様を守る決意をしました。
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