僕はサイコパスの彼女と祭りを楽しみたい
春夜戀
最高で最悪のお祭りをあなたに
僕の彼女の
サイコパスというと文字通りあのサイコパスだ。
まぁ、もしかしたら知らない人もいるかもしれないから、wikipediaから定義を引用しておく。必要だったら読んでくれ。
※
サイコパス (Psychopath) は、異常心理学でいうところの反社会的人格の一種を意味する精神病質(サイコパシー)の通称であり、精神病質者を指す心理学用語。
―引用―
「サイコパス」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より。
2020年3月3日 (火) 12:39 UTC
URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%91%E3%82%B9_(%E6%9B%96%E6%98%A7%E3%81%95%E5%9B%9E%E9%81%BF)
※
まぁ、これだけだとわかりづらいかもしれないから、彩子の特徴を簡単に説明しておこう。列挙するとこんな感じ。
①人を殺したがる
②コミュニケーション能力が高い
③多数の転職歴あり
④いくつかの犯罪歴あり
もう、人間辞めちゃってるよねwww
なんで、こんな子を好きになってしまったかって?
それは、好きになってしまったからとしか言いようがない。
まぁ、その辺の経緯はまた機会があったら追々話すよ。
それより、今話題にすべきなのは、地元で開かれるお祭り、
花水木祭は春の訪れに感謝する地元の小さなお祭り。お祭りの目玉は、最後に行われる花流しだ。みんなで地元の川に白い花水木の花をいっせいに流す。多くの白い花弁が川を流れる様がとても美しいので、県内ではちょっとした名物になっている。
僕は彩子とそのお祭りに行くのが楽しみで楽しみで仕方がない。
だって、花流しに参加したカップルは永遠に結ばれるなんて言われてるんだもん。
ムフフ。これは、行くっきゃない!!
――だけど、懸念事項が一つ。
彩子は外出して目を離すとすぐに見境なく男性を誘惑して、暗がりに連れ込んでは殺そうとしてしまうのだ。
こればっかりは仕方がない。彩子の生来の気質だから。僕がとやかく言ったところで、治るようなものでもない。
だから僕は考えたんだ。彼女を絶対に離さない方法を。
※
――お祭り当日
「ねぇ、陽太。これ恥ずかしいからやめない?」
「ダメだよ。こうでもしないと彩子すぐにどっか行っちゃうでしょ」
いつもはツンとしているのに、今日はめずらしく恥ずかさで顔を赤らめている。
相当恥ずかしいんだろうな。
彩子が気にしているのは、僕と彩子を繋いでいるリストバンドタイプの迷子防止紐だ。
この迷子防止紐は2つのリストバンドと伸縮性の紐からできており、ある程度の距離以上は離れられないようにできている。小さい子が急に道に飛び出したり、どこか遠くに行くのを防ぐためのアイテムだ。
だから、僕と彩子は1mも離れられない。これで、他の男に浮気する彩子を見なくてすむはずだ。
それにしても、今日の彩子はいつもにまして綺麗だ。
腰に大きなリボンのついた青いワンピースにベージュのジャケットを羽織ったキレイめのスタイル。軽くウェーブのかかった長い黒髪に透き通るような白い肌をもつthe清楚系の彩子にぴったりの装いだ。
花流しが始まる前に僕たちはお祭りの屋台を見て回った。
「あのいちご飴が食べたいわ。おごって」
「いいよ。一緒に食べよう」
あれ? 確か彩子はいちごが嫌いって前に言ってたような……。僕の記憶違いかな?
まぁ、すごく美味しそうに食べてもらえてるし、いっか。
そして、最後のイベントがやってきた。
僕と彩子は花水木の花弁が載ったお皿を川へと流した。
白い花びらが月の光に照らされて輝き、川の中にたくさんの星が輝いているかのように見える。ただただ美しいと感じられた。
「陽太はどんな願いごとを書いて流したの?」
花弁を載せる紙皿には、願い事を書くのが風習になっている。
「僕は彩子と永遠に一緒にいられますようにって書いたよ。彩子は?」
「私も陽太とずっと一緒にいられますようにって書いたわ」
彩子らしくないなと思った。彩子なら絶対に「たくさん人を殺せますように」とか書きそうなものだ。
でも、正直、安心した。ずっと心配だったけど、彩子も僕のことを好きでいてくれたということが純粋に嬉しい。
こんなに上手くいくなら、これから毎日、迷子防止紐をつけておくのがいいかもしれない。
※
祭りが終わり、それぞれの家に帰宅した。
家について10分も経たないうちに彩子から電話があった。
「すぐに家にきてほしいの」
その言葉を聞き、嫌な予感がしたので、走って彩子の家に向かった。
合鍵を使って彩子の家に入ると、
――そこには見知らぬ男性の死体があった。
あぁ、ダメじゃないか。また死体を増やして。片付けるの結構大変なんだから。
あれっ? でも、ずっと一緒にいたはずなのにいつの間に男を連れ出して殺害したんだろう?
僕が驚いている姿をみて、したり顔をした彼女は一言呟いた。
「まだ私とおねぇちゃんを見分けられないなんて、本当にダメな人」
―いつもはみない恥ずかしそうな顔
―嫌いなはずのいちご飴を美味しそうに食べる
―「ずっと一緒にいたい」という彼女らしくないお願い
そっか、最初っから君じゃなかったんだね?
双子とはいえ、間違えてしまうなんて彼氏失格だなー。
「今度は絶対に見分けてみせるよ」
僕は彩子の耳元で囁いた。
それを聞いた彩子は不適な笑みを浮かべ、
「約束よ」
言い終えてすぐに僕の唇に口付けをしてきた。
「片付けが残ってるから、あと30分だけだよ」
と言いつつも僕たちは、夜が明けるまで愛し合った。
僕はサイコパスの彼女と祭りを楽しみたい 春夜戀 @haruyokoi
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