第三章 王都編
その①
翌朝。
宣告通り
昨日の特権
立派なレイスの
「……言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよ」
「特にない」
それはそれで腹立つ!
出鼻をくじかれた気分で、私は荷物を馬車に積み込んだ。もうすでに
出かけた
道中はこれといった異変もなく、王都へは五日かけて順調に
初めて
きょろきょろと周囲を見回す私に、レイスは「
レイスは最初の宣言通り、移動中も私との
そんな息が
「ねぇ、スー。あれはなにかな? おいしそうな
精霊として生まれて日が浅いウォルも、私と同じで王都は初めてらしい。ウォルは
「ここにボクが
「あら、確かに似ているわ。
店は雑貨屋のようで、ドア横の
その中で、私はあるものに
「これは……宝箱?」
「お目が高いね、お
声をかけられて
「その宝箱は特に、貴族のお嬢さん方に人気でね。王都で有名な精霊使い
「へえ、だから精霊の宝箱なのね」
私の
「これに自分の大切な物を入れておくと、精霊の祝福が得られて幸運が訪れるっていう話だよ。見たところ、お嬢さんは旅行者だろう。どうだい、お
しかし慣れない人混みで、ドンッと通りすがりの人にぶつかってしまう。
「
雑貨屋でのやり取りも見られていたのか、大地の精霊は
すると、どこからともなくピンクの花弁が現れて、私の頭上へ
「……さっきからなにをしているんだ、お前は。こんなところで立ち止まるな」
花弁を
「わ、わかっているわよ! 精霊が花を
「精霊が?」
そこで、よく考えたら私って花まみれ? と思い至り、急いで
「やっぱりボク、コイツ
ウォルはレイスが
……昔、『精霊を見てみたい』って私に言ったこと、レイスはもう忘れているわよね。
ふと
それから歩き出そうすると、「おい」と引き留められる。
「なに……っ?」
「髪にまだ花弁がついている。……相変わらず、変なとこで
レイスは無表情を
その
『スー、頭にリコラの花弁がついている。……スーは変なとこで鈍臭いな』
遠い過去に置き去りにしたはずの、
──ほんの
それから自分の
「ご、護衛のくせにおいていかないでよ!」
髪の花弁もそのままに後を追う。文句を飛ばしつつも、先ほどの
どうして今さら、あんな顔を私に見せるのだろう。
……過去の
しっかりなさいスーリアと、心中で自分を
風に遊ばれ、
街の南部へと足を進めて、辿り着いた教会の大きさに、私は
周辺には大地の精霊が降らせたものと同じ、ピンクの花が
「──ようこそおいでくださいました、精霊姫様、護衛騎士様。教会におられる間、お二人の世話役を任されております、ロアセル=フィンスと申します」
「お気軽にロアとお呼びください」と、教会の使徒である精霊使いが着る、白いローブを
応接室のような場所に通され、ソファにレイスと並んで(ただし、二人の間にはウォル
私より四、五
とはいえこの若さで教会所属の精霊使いとして、精霊姫の世話役を任されるのだから、かなり
私は「よろしくお願いします、ロアさん」と、ソファから立ち上がりお辞儀をした。
「わ! さ、さん付けなんて
「え? じゃあ、ロア……君? それより私の方こそ、精霊姫様呼びは慣れなくて……なんで選ばれたのかもわからないくらいだし。できれば名前でお願いしたいわ」
「うぇ!? ス、スーリア様でよろしいのですか……?」
微笑んで「ええ」と返せば、ロア君は「き、綺麗な方を名前でお呼びするのは
しかしロア君は、
「
「……お前は変わらず、年下に甘いな」
そこは否定しない。私は自分より下の者に、とことん甘い自覚がある。
そういえばまだ仲が良かった
というか今さらだけど、レイスは私より年下なのよね。
それなのになんなのかしら、このロア君との差は。再会してからずっとお前呼びで、一度も名前を呼ばないし。……別にもう、レイスに「スー」と呼ばれたいわけじゃないけど。
「スーリア様には、二週間ほど精霊姫としての
「レイスでいいわよ、ロア君」
「勝手に名前で呼ばせるな。護衛騎士と役職で呼べ」
「レイスでいいじゃない!」
しまった、私が怯えさせてどうする。
「き、騎士様も、部屋をご用意してありますので、あ、あとでご案内
言いにくそうに、ロア君が小さな口をまごつかせる。
「実は現在、この王都では、精霊使いが次々と
「え……」
「行方不明になった方々は
重々しい口調で語るロア君に、リンスの情報は正しかったのだと、私は目を
精霊使いだけが、
「このような
「え、やだ」と感情的に返しそうになり、私は慌てて口をつぐんだ。
チラッと横のレイスを
それはなんという
やっぱり花弁を取る時に見せたあの表情は、
「今日はお
ロア君の案内に従って、私たちは各自、用意された部屋へと移った。
部屋は自分の家より広く
だけどふかふかのベッドに身を
……無事に役目を終えて、一日でも早くアルルヴェール領に帰りたいわ。
そう
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