五日目

「もう君がここに来て5日か、何だか早いような、長かったような」

「昨日はまだ4日だみたいなこと言ってたのにどうしたんだよ」


 何だか今日の彼女は元気がない。俺でも言い負かせそうなぐらいだ。


「この夢がいつまで続くのか分からないけど、せいぜいその時まで楽しもうぜ」

「そう、だよね」

「それよりも見てくれ」


 近くにあったクッションを念力で持ち上げる。ここが夢だとしっかりと意識できるようになったのだ。

 それを見た彼女は心底驚いたような顔をしている。


「何だよ、俺が念力を使えるようになるのはそんなに驚くことじゃないだろ」

「い、いや、さすが中学生みたいな感性を持ってるだけあるなと思っただけ」


 茫然としている彼女は少し驚きすぎだ。ここは日頃の恨みを晴らさないと。


「これが日頃の恨みだ!」

「きゃあ!」


 使えるようになったばかりの念力でクッションを投擲する。軽い音と共にクッションが彼女の顔に当たると、後ろに倒れてそれっきり動かなくなる。


「お、おい、大丈夫か?」


 クッションが当たっただけなので大丈夫だとは思うが、近づいて声をかけると、顔に当たっていたクッションがそのまま帰ってくる。


「何すんだよ!」

「お返しだよ、私を甘く見てもらったら困るね!」


 さっきまでのは演技だったらしく、周りには新しく生まれたクッションが大量に浮いている。


「ちょっ、その量は無理だって!」

「問答無用!」


 彼女の声と共に十数個のクッションが飛んでくる。


「ぎゃあ!」


 さっきとは全く逆の構図だ。量が桁違いに多いけど。


「これが報いだよ」


 彼女はクッションに埋まった俺を見て油断しているようだが、俺はそれくらいじゃやられないぞ。彼女の後ろの机の下にあるクッションを少しずつ動かす。


「大丈夫?動かないけど」

「くらえ!」


 埋まっていた状態から抜け出して叫ぶ。さっきの俺と同じように、近づいて来たところに後ろからクッションをぶつけようとする。


「わっ!あ!」


 彼女は反射的に身をかがめてクッションを躱す。そのせいでクッションが俺の顔に衝突する。そんな俺を見て彼女が大笑いする。やはり俺は勝てないのか。

 ぐぬぬと唸っていると、地面に写真が落ちていることに気づく。躱された時に落ちた物だろうか?


「あ!それは!」


 彼女が見るのを止めようとするが、ひっくり返して写真部分を見る。


「これは……俺か?」


 そこに写っていたのは俺と彼女だが、思わず首を傾げる。こんな写真を撮った記憶がないのだ。俺と彼女が一緒にロッキーを持って取っている写真。俺はここまで彼女とひっついてはいない。

 答えを聞こうと思い、彼女の方を向く。


「ごめん」


 彼女はとても泣きそうな顔をして、それだけ言うとどうやったのかは分からないが、突然消えた。

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