三日目

「おはよ」

「おお」


 実際は夜なのに朝の挨拶をすることに抵抗がなかった。いつでもここが明るいからだろうか?


「今日は料理を作ってみたんだけど食べる?」

「まじで!?食べさせてくれ」

「女の子と手も繋いだことがないだろう君に私が手料理を恵んであげよう」


 両手を腰に当てて、得意げにしている。


「ありがたやー」

「何で棒読みなの!」


 彼女がうー、と唸っている。女子の手料理なんて初めてだけど、彼女が作ったと思うと不思議と緊張とかしなかった。


「私の計画では、君が女子の手料理を前にして緊張している所を笑う手筈だったのに」

「あまり俺を舐めるなよ、俺の女子に対する耐性は上がってきているんだよ」

「はじめにあった時はオロオロしてたくせに。大丈夫ですかー?って」

「そ、そんなに怯えてねぇよ!」


 初めは少し混乱していただけだ。次おんなじことが起こったら対応できる……はず。


「それよりも何作ったんだ?」

「カレーだよ、誰でも簡単に作れるし、失敗することないし」

「カレーと言えば最近CM変わったよな」

「カレー、カレー、あなたは何故そんなに…………はっ!魅惑の歌を歌ってしまった」

「CMの歌って何故か耳に残るんだよな、でもそれ1ヶ月前のやつだぞ?」

「本当に!?私流行に乗り遅れてる?」

「流行って程のことではないけど、乗り遅れてるな」

「まじかー」


 彼女は情報には疎いらしい。最近の女子高生の情報網はすごいって聞くけど、彼女はそうでもないらしい。

 そんなことを考えていると、嫌な考えが浮かんでくる。まさかとは思うけど。


「今日の日付って言えるか?」

「2020年8月31日じゃないの?」

「そうだよな、時間が狂ってるのかと思った」

「何それ、映画じゃないんだから。それよりもカレーは?冷めちゃうよ」


 彼女がなぜか強引に話題を切って、念力(正式名称)でカレーやお皿など必要なものを持ってくる。

 ちなみに俺も念力は使えるようになっているが、まだ十円玉を浮かせるぐらいしか出来ないので練習あるのみだ。


「はいどうぞ、私の特性カレーだよ」

「見た目は凄いうまそうだ」

「一言余計!」

「悪い悪い、それじゃあ食べさせてもら――」

「ちょっと待った!」


 スプーンを持って食べようとした時に、彼女のストップが入る。


「な、なんだよ」

「いただきますは?」

「小学生じゃないだからいいだろ」

「いるよ!他の人の料理ならともかく、女の子の手・料・理だよ!感謝の気持ちを込めないと」

「理由しょぼいな!?」

「それほどでもないけど」

「褒めてないからな!?」


 全く、彼女がいると騒がしいけど、退屈はしないな。


「はい!静かに手を合わせて」

「それ本当に小学生の頃やったぞ!」

「魔法とか空飛ぶとか小学生みたいなこと言ってるからいいじゃん」

「初め俺の事中学生って言ってなかったか?」

「はい!手を合わせて!」


 無理やり押し切ろうとする彼女言葉にしぶしぶ手を合わせる。まさか高校生にもなってこんな事をしなくてはいけないとは。


「いただきます」

「い、いただきます」


 この日食べたカレーは美味しかったけど、かなり恥ずかしかった。

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