二日目


「またここかよ」


 昨日見た夢と同じで、白い空間に来たようだ。昨日はまじで暇だった。

 だが昨日と一つ大きな違いがあることに気づく。女性の泣き声がないのだ。部屋の中央で体操座りは変わらないけど。

しょうがないので、また泣き出すんじゃ無いかとビクビクしながら声をかける。


「あのー、大丈夫ですか?」


 昨日とは違い、彼女はこちらを向いて口を開く。


「ヘタレ」

「何故俺は罵倒されているんだ?」

「なんでも無い、昨日はごめんね」


 何故だろうか?女性経験皆無の俺がこんなにもスラスラと(ちょっとだけど)喋れている。なんだか彼女は他人とは思えないのだ。


「まあいいよ、ここがどこか知ってる?」

「いや、さっぱりだよ。あんたは知ってるのか?」


 聞いた時に彼女が少し悲しそうな顔をしたことに気になった。


「ここは夢の中だよ」

「いや知ってるよ!もっと何か他にないのか?」

「あんまりないと思う、私もここのことあんまり知らないし」


 彼女は俺より3日ほど早く居たらしいが、ここが何処なのかは分からないらしい。彼女は現実にしっかり存在するらしく、俺の妄想とかじゃないと思う。まだ分からないけど。ちなみに泣いていたのは現実の方で何かあったらしいが、教えてくれなかった。


「ここにある物は何処から来たんだ?ゲームみたいに湧いてくるのか?」

「湧くって言うより出したの、こうやって」


 そう言った彼女の手からロッキーが出てくる。しかも俺の好きな限定タクアン味……じゃなくて、何それ魔法!?


「どうやってるんだ!?」

「普通にパッと。ここは夢の中だから色んなことができるよ。空はまだ飛べてないけど……」

「賞味期限とかどうなってるんだ?」

「うーん、出したその日付しか書いてないから分からないかな」


 他にもいろいろ質問して分かった事は、どうやらここは認知の問題では何でもできるらしい。魔法とか空を飛んだりとか、人が無意識に出来ないって思ってる事は出来ないらしい。


「魔法使うのが夢だったのに!」

「中学生じゃないんだから、物を出せるだけで我慢しなよ」


 俺の事を彼女が笑う。昨日を含めずに、まだ会って数十分ぐらいしか経ってないのに親友のような感じがする。そうは言っても彼女を現実でも見た記憶はないが。


「でもこんな事ならできるよ」


 そう言う彼女の周りには物がふわふわ浮いている。


「どうやってるんだ!?」

「3日前から練習してたんだ、凄いでしょ」


 ふふん、彼女が笑う。俺も今日から練習しよう。念力(仮)は子供の夢だ。

 念力だ念力だとはしゃいで言っていたらまた彼女に笑われた。




◆◆◆◆




 念力は置いといて、取り敢えず痛覚は再現できるようになった。痛覚がないとなんか変な気分なのだ。


「それは分かる気がする、麻酔してる時みたいな感覚なんだよね」

「俺は歯医者を思い出すんだよ」

「やっぱり子供じゃん」

「子供じゃねえよ!」


 彼女はよく笑う。だがその笑う対象が毎回俺なのは何だか気にくわないけど。

 そんな感じで色々遊んでいると、時計から鳩が飛び出してきて時間を知らせる。昨日みたいに突然現実に戻るのは心臓に悪いから作ったのだ。ちなみに、この空間は現実とおなじ時間の進み方をするらしく、


「それじゃあまた明日」

「明日があるか分からないけどな」

「きっとあるよ」


 彼女は自信満々に答える、彼女自信はどこから来ているのだろうか?そんな彼女のことを考えながら、俺も明日がおんなじ夢だったらいいなと思った。

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