第28話 美少女の汗。それは活力の源。

 神聖アナカリス王国の北端にある国境の街、シュロッツ。


 そこに佇む酒場に入った俺、リベル、レヴィの三人は、ひとまずカウンターに腰を落ち着けた。


 並び順は、中央に俺、左にリベル、右にレヴィだ。

 二人とも俺に身体を寄せてくるものだから、左右の二の腕にたいへん柔らかいものの存在が感じられる。


 左はたゆたゆ。

 右はぷにぷに。


「…………」


 カウンター内の美人マスターが無言で頬を引きつらせているが、構うものか。


 美少女ふたりの膨らみを感じながら、酒場のミルクを味わう。

 すると、どうだろう。


 このミルクは、リベルの味に近いだろうか?

 それともレヴィの味に近いだろうか?

 

 そうして想像力を膨らませれば、ミルクの旨味が一層引き立つというものだ。


「乳が、飲みたい……」


 俺が遠い目をしている横で、レヴィがなにやら早口で語っている。


 ……おっと、そうだった。

 そもそも酒場に寄ったのは、今の状況を整理し、レヴィの話を聞く時間を取るためだったのだ。



 レヴィの話をまとめると、おおよそこんな感じだった。


・二〇〇〇年前、レヴィは自らの身体を勇者の世界樹に封印した。


・世界樹の中で精神体になったレヴィは、俺が転生してくるのを待ち続けていた。


・二〇〇〇年にわたって魔力を放出し続けたおかげで、この世界の魔粒子の濃度が大いに高まった。……とにかく俺を喜ばせたかったらしい。


・その影響で、今もレヴィの身体からは魔粒子が放出されている。


・欲望だだ漏れの喋り方になったのは、俺への愛欲が二〇〇〇年かけて熟成された結果、もう我慢するのをやめたから。


 ――などなどなど。



「わ、わたしったら、すごい方々とお知り合いになっちゃいました……!」


 リベルの動揺は意外と少なかった。

 俺という実例があったせいか、レヴィが神話に出てくる〝勇者の少女〟であることを、すぐに受け入れてくれたのだ。


 話が早くて助かるのだが……しかし。


「ですけど、レヴィさんとゼクスさんって、二〇〇〇年前にお付き合いされていたわけじゃないんですよね?」


「付き合ってたわ。というか、ケッコンしてたわ」


「おい、記憶を捏造するな」


「しーてーたーのー! 私、い~っつもそうやって妄想してたんだから!」


「妄想じゃないですか! レヴィさん、いけませんよ。ゼクスさんは色欲魔法を極めるのに忙しいんですから。……あと、弟子を育てるのにも忙しいんですっ!」


「らめぇぇえぇ! ゼクスは私とケッコンするの! 朝から晩までちゅっちゅして、夢の中でもちゅっちゅするのー!」


「だめですぅう! 二〇〇〇年も待ち続けたことはお察ししますけど、ゼクスさんは渡しませんよぅ!」


 リベルとレヴィが、左右から俺の腕を引っ張り合う。

 あぁ、美人マスターの視線が痛い……いや、痛気持ちいい……。




 ――その後。


 店を追い出された俺たちは、シュロッツの街を散策しながら、今後の動きについて相談を進めた。


 レヴィもリベルも不安そうに眉を下げているが、俺は二人の肩をポンと叩く。


「大丈夫、すでに妙案は浮かんでいる。歩きながら二人の膨らみの感触をたゆたゆと思い返していたところ、ビンッと閃いたんだ」


「さすがゼクスね! 大きさと柔らかさよりもハリが大事ってことよね!」


「すごいですゼクスさんっ! ……大きさと柔らかさも重要ですよねっ? ねっ?」


 どこか不穏な空気を孕みながらも、二人の美少女がキャッキャと沸き立つ。



・勇者の世界樹について、全国民に納得してもらう。


・俺たちを罪人扱いするのをやめてもらう。


・王立ファナティコ魔法学院に普段どおり通えるようになる。



 それらすべてを叶えることは理論上可能だが、すぐに実現するのは難しい。


「いくらか準備が必要なんだ。二人とも、手伝ってくれるな?」


 ――いや、その質問は無粋だった。

 俺が訊ねるまでもなく、レヴィとリベルは瞳を輝かせていたのだから。


「んっ! ゼクスのやることなら、なぁ~んでも協力するわ!」


「わ、わたしだって何でもします! ゼクスさん、何でも仰ってください!」


 何でも協力する。

 何でもする。


 二人の美少女から魅惑の宣言を受けてしまった。

 こうなっては、俺も頑張らないわけにはいかないだろう。


 心を一つに、俺たちは移動を開始した。


 北の炭鉱街シュロッツから、北嶺の村ピーサン、北西部の遊楽街コルーパ……。


 怪しげな追っ手をかわしつつ、神聖アナカリス王国の北部を大きく西側へ迂回しながら、各地で魔法の鍛錬に励んできた。

 これは断じて逃亡生活ではなく、反撃の準備に他ならないのだ。


 その間、魔法の鍛錬は基本的に三人で行った。


 三人でするのは――良い。


 その背徳感と興奮のおかけで、想定よりも早い段階で打開策を実現できそうになったのである。


 そして、およそ半月後……。

 行き着いたのが、西海岸の高級ビーチリゾート・アートケヒヤだったというわけだ。




 ――汗の熱気が充満する宿屋の一室。


 鍛錬はいよいよ大詰め。

 ここで新たな魔法が完成すれば、勇者の世界樹の件を解決できそうだ。


「はぁ、はぁ……。レヴィ。リベル。そろそろ、できるぞ……!」


 ごく当たり前のことだが、念のため確認だ。

 俺は決して、美少女たちの柔肌と柔乳と柔腹と柔尻と柔ももの官能的な肉感や、入り乱れての汗だくぺろぺろ及び汗だくぬるぬるを愉しんでいただけではない。


 それらによって心身を揺さぶられながらも、平常心を保ち、新たな魔法を完成させるべく体内の魔力を錬り上げていたのだ。



 過酷な環境に耐えなければ、新たな魔法を生み出すことはできない――。



 そんな持論が、あと少しで証明できる。


「二人とも――頼む!」


 汗でぬるぬるになったレヴィとリベル。

 二人の水着美少女に、俺は最後の指示を下した。


 事前に伝えておいたのだ。

 この鍛錬が最終段階に突入したら、二人同時に〝ある部分〟にむしゃぶりついてくれ、と。


「あぁぁ……もぉ、ゼクしゅったらぁ~焦らしすぎよぉぉ……!」


「はぁ、はぁ、んんっ……ゼクスさぁん……。あ、あそこ……やっと、おしゃぶりできるんですねぇ……?」


 レヴィとリベルは、心身ともにとろとろだ。

 ろれつも回らず、瞳は肉欲に冒され、俺の内ももを二人がかりでサワサワとまさぐってくる。


「ぬぅぅうっ、ふおぉっ……股間の至近距離に、なんたるくすぐったさを! だが、俺は負けないぞ。最後の刺激に耐えヌけば、新たな魔法が完成するんだ……!!」


 集中力を極限まで高め、俺は魔導術式の最後の一ピースをハメにかかる。



 ――レヴィとリベルが口を開け、


「はむんっ……。ぢゅぶぶぶっ! ぢゅぽっ、ぢゅぽぽっ……ぢゅるるるる!」


「はむぅぅ……。ちゅぽっ、れろろぉぉ……。はむっ、はむっ……ちゅるるっ!」


 左右から、俺の首筋にむしゃぶりついた!



「~~~~~~~~~~ッッ!!」


 最後の刺激――美少女たちに首筋をはむはむちゅっちゅされる刺激は、絶後である。


 瑞々しく濡れた唇、唾液でぬめった舌がもたらす快感が、俺の平静を根こそぎ奪わんとして襲いかかってくる。


 だが……!


「か、かんせい、だ……。ぬぅっ……か、完成したぞ……ふうぉぉっ!?」


 俺は――耐えた。


 二人がかりで首筋をはむはむちゅっちゅされながらも、決して心身のバランスを崩さず、新たな魔法を生み出したのだ。


「ぢゅるっ、ぢゅぷっ、ちゅっ……。んんっ、ゼクスさん……おいひぃれす……ぢゅぽっ、ぢゅぽっ……んぢゅるるるっ……ぷはっ! はむぅぅっ……ぢゅぢゅっ、れろぉ~」


「ぶぢゅるるっ……んちゅっ、んちゅっ……ちゅっちゅっちゅ! はぁ、はぁ、ゼクスしゅき……しゅきしゅきしゅきぃぃ……。ちゅぷぷぷっ……ぢゅるるるるるぅぅ~!!」


 しかし、二人のはむはむちゅっちゅは終わらない。

 リベルとレヴィめ。二人とも、俺が限界を超えるまではむはむちゅっちゅを止めるつもりはないようだ……ふをぉぉっ!?


 唾液と舌による淫らな水音のデュエットが、汗の蒸し風呂に響き続ける。

 それはさながら、一足早い勝利のファンファーレのように――。




 ――準備は、すべて整った。


 俺たちは宿屋の野外浴場(惜しくも男女別!)で汗を流し、身だしなみを整えてから街へと繰り出す。


 アートケヒヤはたくさんの観光客でごった返しているが、魔力の波形を丁寧に辿っていけば、標的を探すのは造作もない。


 ――いた。


「さあ、反撃といこうか!」


 俺は前方――二人の追っ手をまっすぐ見つめた。

 路地裏の魔道具店で、のんきに聞き込み調査を行っている。


 煌びやかな金色の巻き毛。

 どこもかしこもむっちむちな副生徒会長、ユリーヌ。


 涼しげな水色のショートボブ。

 ぺたんこボディの風紀委員長、アイリス。


 どちらも律儀に制服姿である。


 第一階梯魔法――アイスウィンド。

 俺はユリーヌとアイリスのスカートに狙いを定め、下からフーッといたずらな冷風を送った。


「あンっ、えっちな風ですの!」


「うぁっ……。……なんで、冷たい風が……?」


 今日のユリーヌは、純白のレース。

 布地が極小のヒモパンだ。


 そしてアイリスは、水色の綿ぱんつ。

 かなりきわどいローレグだ。


 眼福きわまりない光景だが、まわりの観光客からは見えない角度でめくり上げることに成功した。

 俺の、俺による、俺だけが楽しめるパンチラ。

 我ながら、じつに精密なスカートめくりだ。


 ユリーヌとアイリスは恥ずかしそうにスカートを押さえ、不意にこちらを振り返り――。


 ツリ目とジト目を、同時に大きく見開いた。

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