第3話 噂
私はお世辞にもいい性格はしていない。
短気だし思った事はすぐ口にでるし、何かと揉め事に首を突っ込みたくなる。特に人の悪口や容姿をバカにした言動を聞くと居ても立ってもいられない。
そんな私は、当然と言っていいのかなんなのか……彼氏が出来たことはない。そして好きな人も……いや正確には過去に一度だけ恋をしていたと思う。
思うと言うのは記憶が曖昧で朧気だからだ。
「雪〜次体育だぞ、更衣室行くぞ!」
「あ、うん今行く!」
私はかおると共に教室を出る。そして去り際にチラリと転校生を見る。すると彼は立ち上がりどこかへ行ってしまった。
(男子はクラスで着替えるはずじゃ)
そんな事を思いながら更衣室へと向かう。
「ちょっとあの転校生はないよねー」
「期待してたのに」
「ガッカリだよねあんなデブ」
「だよねーなんか拍子抜け」
「あぁどこかにイケメン落ちてないかな…」
「ねぇ、転校生って?」
「どんな子なの?」
女子更衣室での会話は専ら転校生の噂だ。体育は私達のクラス含めて三クラス合同で行われる。
女子特有の色恋話に花を咲かせているが、内容はいただけない。私はそういうのが許せないので一言文句を言ってやろうと声を出そうとする。
「ちょっとあな……」
「おいッ!それ以上口を開くな!」
私は一瞬何が起こったかわからなかった。
見ると隣のかおるが声を荒らげていた。その光景に私含め周りの女子は唖然としている。だって普段あまり怒ることがないかおるが、今迄に見せた事がない顔をしているからだ。
「フフ……人を呪わば穴二つ。君たち気をつけた方がいいよ」
いつの間にか隣に現れたソラもそんな事を言い出した。
「まぁ、とうとう雉ノ宮家の力を見せる時が来たようですね!それで雪音敵はどちらに?」
咲葉も参戦。てか怖い。
「あぁ……いや、転校生の……」
私はどう言ったものかと悩んでいたが
「……なんでもないです」
「気のせいよ、さ着替えましょう」
「……」
噂話をしていた彼女達はあまりの圧力に押されてたじろいでいる。
「みんなどうしたの?普段なら私が突入して、騒ぎが大きくなって面白おかしく笑ってんじゃん」
今迄の彼女達とは違っていたので疑問を投げかける。
「ん?そうか?いつも通りだろ」
「フフ……新たな私を見て戦慄するがいい」
「で?誰が敵ですか?」
咲葉だけまだ敵を探している。
「まぁいいやそれより早く着替えないと遅れるよ!」
私はどこか拍子抜けして彼女達を促す。
今日の授業は体力測定を兼ねた持久走だ。私はあまり体力に自信がある方じゃない。それに過去の怪我が原因で体を動かすのが苦手だ。
教師もそこはわかっているらしく、ある程度でいいと言ってくれた。この体育教師は女子に甘いと噂がある。気をつけよ。
そして授業が始まり一時して周りの注目は転校生に集まっている。
悪い意味で……
「ギャハハホントに男かよ?」
「めちゃくちゃスローペースじゃん」
「何周差つけられてんだよ?」
男子達の声
「顔はダメでも運動出来たらカッコよかったのに。これじゃホントに取り柄ないね」
「体力無いといざと言う時守って貰えないしー」
「マジうける!女子にも抜かれてんじゃん」
「ないわー」
女子達の声
「おーい転校生!そんなペースじゃ日付変わっちまうぞ!」
ハハハと笑う周りの連中
体育教師も揶揄するように言葉を投げる。
そしてチラリと女子達の方を向き笑いを誘う。どうやら反応を楽しんでいる様だ。
「この学校の連中には反吐が出る」
私は一人無気力さを噛み締めていた。
(あんなに頑張ってんじゃん!遅いけど必死に走ってんじゃん!なんでそういう人を馬鹿に出来るの?)
頑張ってる人が損をする。笑いものにされる。そんな光景私は耐えられなかった……私は目を逸らしたくなり、唇を噛み、握り拳を腿に当て視線を下に下ろす。
すると隣に一人の女性が現れる
「……雪音。しっかり見ててやれ」
見るとかおるが私の頬を掴み視線を上に向けてきた。
「えっ?」
かおるの顔を見ると一段と真剣な表情。それでいて決意に満ちた目で転校生を見ている。そして握り締められたその拳には薄らと血が滲んでいる。
きっと彼女も悔しいのだろう。そう思い一緒に転校生を応援する。
咲葉とソラは彼と一緒のグループだ。彼とすれ違う時に、何か言っていた様に見えたが遠すぎてわからなかった。
そして授業が終わり次の時間のチャイムが鳴り響く頃……彼は教室に現れなかった。
ーーーーーーーーーー
【あとがき】
だいぶお待たせしました。
桃の花をあなたに更新再開します。
再開に伴い変更点があります。
この物語は主に雪音視点で進行していこうと思います!
それに伴い作品のジャンルをラブコメから恋愛に移行しました。
そして、前話までの話をちょくちょく改稿すると思います。(内容は変えません)
今後とも楽しんで頂けたら嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます