第2話 出会い
ツーっと伝う頬に流れる雫はなんだろう?僕はそれが涙だと気づくのに随分時間がかかった。
目の前に彼女がいる……
ずっと会いたかった彼女が……
彼女と会った時の為にシュミレーションしていた事が意味をなさないまま、ただひたすら頬を伝う雫がずっと流れていた。どれくらい泣いていただろう……
「どどど、どーしたの鬼神くん!?体調悪い、保健室行く!?」
オロオロした声で尋ねてきた、担任の白石ハルカ先生の声でようやく我に返って、自分が泣いている事に気づいた。
「……し、失礼しました。大丈夫です。何でもありません」
涙声になりながら、そう口にした言葉はきっと頼りない印象だっただろう。
泣いている彼を見て、私は少し勘違いをしてしまった。
「ちょっとかおる〜。あの子あんたの顔を見て泣いてるわよ?何かしたんじゃ無いでしょうね?」
そう言って話しかけた相手は、私の前席に座る幼馴染の1人、
「ねーってば?聞いてるの?」
肩を叩いても、返事がない。まるで時間が停まっているかのように動かない。
「ねぇソラ!かおるがフリーズしてるんだけ……ど」
隣の席のソラを見て、言葉が途中で止まってしまった。普段は皆の前では無口で無愛想で、よく何を考えているかわからないと言われている彼女が……大きく目と口を開いて、彼の事を凝視していたからである。
私の頭の中は混乱していた。もしかして知り合いなのか?
そう思って咲葉の方を見てみると、今まで見たこと無いような……嬉しいそうな、それでいて悲しいそうな。普段の腹黒は何処へいったと言うような、慈愛に満ちた表情をしていた。
あくまで私の感覚だから咲葉の考えはよくわからん!
そんな中、彼の自己紹介が行われた。
「先程は失礼しました。改めましてご挨拶させて頂きます。名前は
そう言って彼は黒板に自分の名前を書き始めた。
「やっぱり……」
「……ッ!!」
かおるとソラが小声で何かを言った気がしたが、私には聞き取れなかった。
「えーっと……家庭の事情で海外に居て、入学が遅れました。千姫って女の子みたいな名前だと良く言われますけど、男ですので!これからよろしくお願いします」
そう言って彼は頭を下げた。クラス内はさっきの泣きだしたイメージが強すぎて、未だにザワザワしている。
「泣き虫なの?」
「ってかホントに女みたいな名前だな!クククッ」
「故郷が恋しくて泣いたのかな。」
そんな言葉が聞こえてきた。
どうやらターゲットを見つけた肉食獣のように自分の地位を確立したいが為に下に見る奴を見つけたのだろう。
正直反吐が出る。
そう思い発信源の元に向けて立ち上がろうとした時。
「は〜い!皆静かに〜!今日から一緒のクラスになるんだから!仲良くしなきなゃ……ダ・メ・だ・ぞ!」
「はい!センセー!!!」
ハルカ先生の間延びした声と仕草に今回は助けられた。主に男子達の声がやたらデカい。先生の指示で、彼は私の左隣の席になった。窓際の一番うしろの席である。
「鬼神くんよろしくー」
初対面の挨拶にしては軽かっただろうか?そんな感じでテキトーに、けれど失礼の無いように接していたと思う。
………うん!この時はしっかり失礼のないようにしていたよ?だけど、その後の事は流石に予想外だよ!?いくら私でもそりゃぁ怒りますよ!!
じぃぃ
隣に来た彼がずっと私を見ている。……そうワタシを……いや正確にはワタシの水平線の彼方まで真っ直ぐな一部を!!
「あの〜、どこ見てんの?」
「えっ?……胸を」
「ッ!!!!?」
バコンッ!!!
その瞬間、私は彼に世界王者もビックリする程のビンタを放っていた!!
後から咲葉達に聞いた話では……
「あれはビンタの音じゃ無かったわね」
「もうちょっと優しくしなよぉ」
「雪音……世界を狙える……フフ」
だってしょうがないじゃん!!初対面の人に、自分のコンプレックスをバカにされたんだから!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます