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 まずは、下調べだ。

 昨今のインターネットの興隆で、ネットで名前を検索すれば大抵のことはわかる。

だが〝義堂真実〟で検索しても、グーグルは特に何も提示してくれず、ツイッターやインスタグラムにもアカウントは存在しなかった。

彼女の自殺記事も調べるが、目新しいことは何一つ載っていない。被害者の人権を考え、特定できるような情報も掲載されていなかった。

仕方なく、自分で知っていることをノートに書きだす。

義堂真実、十七歳。……愕然とした。知っていることと言えばそれくらいで、主観的な感想とは別に、ここに書けるような客観的事実を、信藤は何一つ知らないのだ。

それで、よく彼女を好き、と言えたものだ。

自嘲しながら、ノートを閉じ、決意する。

ならばこの足跡を追う旅で、彼女のことをもっと知ろう。

本当の彼女を知っているのは自分だけなのだから、その他のことなど蛇足に過ぎないが、それがリアリティをもたらし、裏付けをする。

信藤はこれまで三冊の小説を発表した高校生小説家だった。新人賞を受賞したデビュー作のミステリーは、華々しく打ち出され、そこそこ売れた。

だがそれ以降は話題になることはなく、既に忘れられかけている。

本当の義堂のことを世間に知らしめることとが勿論第一義だが、同時に、自分の力を再び世間に示すチャンスだ。

信藤は暗い情熱に火を灯し、窓の外の闇を見据えた。

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