プロローグⅢ



     ※


「月が綺麗だ」

視界には、真っ暗な夜空に大きな月がまあるく光っていた。

 あいつと話すときはいつも、夜だった。

 その中、空を見上げるようになったのはいつからだっただろう。

 夜は、敵である世界を、黒く染めて見えなくしてくれる。

 それがいつしか、暗い世界にいる自分を照らしてくれる時間となった。

 目に映る夜空は、月以外にも星が瞬き、それは美しかった。月は自分で輝いていないとしても、光っているのは嘘ではない。自分で光っていないだけで、月がなければ夜は照らされない。

嘘とは何だろう。

事実ではないこと。人を騙すために言う、事実とは違う言葉。

だが、嘘が真実ではないと、誰が言った?

真実とは何だ?

うそ偽りのないこと。本当のこと。

本当のこととは? 〝本当〟にうそ偽りがないとでも?

それを決めるのは、誰だ?

その答えを知りたくて、俺は、この戦いを始めたんじゃないのか?

――その答えに、俺は、辿り着いた

だからこれだけ、満足しているのだろう。

 満天の星が、世界を彩っている。ふわり、といつも嗅いだ香りが、心を満たした。


     ※

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