プロローグⅡ



     ※


「知ってる」

「えっ」

 そう告げられ、問い返したかったが、無情にも体は後ろに引っ張られていく。

 どこから、どこまで知っていたのだろう。

 伸ばした手は空を掻き、香りだけが届く。

 脳が、熱を上げて回転していく。上に流れていく景色のスピードが、ゆっくりになる。

 全てを知った上で、それでも全てを呑み込んでいた?

 彼女が強く自分を持ち続ける限り、自分の呪いは届かない?

 いや、でもこれは、一生を懸けての戦いで、しかも、私は決して負けることがない。

 ならやっぱり――。

 薄っすらと、顔に笑みが浮かんだ。

 視界が暗く広がる空に向けられる。

 重たい雲が闇を覆っていた――。


     ※

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