004 OUKIN
東新宿のスーパーでは、刺し身の盛り合わせとカップ酒を買った。30代も半ばを過ぎても
(美少女ゲームといえば、女体盛り。)
と、悪魔の一統が、少女の裸体にトロサーモンやイカソーメンやアワビなどなど何かとうねうねにょろにょろしている魚類貝類を盛り立てる様を想像する。
「サイトウ、最低だな。」
という、今は二児の母である腐女子仲間のスルガのツッコミが聞こえた気がした私は、
(けっして私の患者ちゃんたちの中高生ではなく、あくまで二次元少女の方を思い浮かべつつ、だがな。)
と、心の中で、白衣姿でポーズを決めた。
ともあれ、御三家校の腐女子中学生時代からゲーム依存症を専門とする精神科医としてのキャリアを積み上げての今に至るまで、男性のものであれ、女性のものであれ、あらゆる表層心理・深層心理に、私は好奇心ランランなのだった。そんな私が美少女ゲームをやるからには、いかにも(げへへ。)という下卑だ声を出しそうな
☆
スーパーでは高まる期待に下卑た笑みを浮かべてしまった私だったが、家に帰ってセレクトしたのは、先日のカルテにも書いた香港のゲームショウプラットホームの『OUKIN』だった。サチの治療に役立つかもしれないとか、今日のサチに共通する要素を探すとかではない。おそらくはネトゲーの『OUKIN』の方にはほとんど登場してこないであろう、
そんなミサトがもし、『OUKIN』をプレイしたとすれば思うであろうこと。
ゲームショウプラットホームにログインし、『OUKIN』のアカウントを取得した。なるほど、ゲームショウ版ではバトルでホログラフィも選べるというわけね。『OUKIN』の懐かしいキャラクターの中から長身の剣士おねえさまを選択した私は、まずは空飛ぶ竜種の一種に実家の秘伝を使っての緒戦を挑みはじめた。
そして、ゲーマーサイトウのバトルは続く。
☆
早朝に目覚めた私は、
医療者としての矜持に目覚め、コタツの台まで這い起きて台に
レポートのタイトルは、『希少な若年のDID併発型ゲーム依存症ゆえに、破瓜型のケースのような配慮が必要あり。』とした。要するに、初潮は破瓜の年を迎えたお年頃に統合失調症を発症してしまった患者さんと同様の配慮を行い、慎重にサチの治療戦略を立案すべしというものである。
書き終えた私には、
「やはり、サイトウ、最低だな。」
という、今は二児の母である腐女子仲間のスルガのツッコミが再び幻聴として届いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます