001 リトル・グラフィ
今日もヒトエリのライブは盛況だった。
ヒトエリこと、ひとえリミテーション・ガールズの裏方を務めることになった
興味を持ってライブに訪れてくれた人たちの一定層が、ガールズたちのファンとなってくれている。ファンたちからのライブパフォーマンスへの投げ銭も増加を続けている。
ガールズといいつつも、ヒトエリのメンバーに性別はない。バーチャルな活動体のグラフィであるメンバーの共通要素は、いわゆる夏着物である
ヒトエリのグラフィックを担当しているゲーム開発会社のゼータスペックは、グラフィがポンドから適切な
これまでのバーチャル・アイドル系のプロジェクトでは、メンバーの動作は、クリエイターやエンジニアが泥臭くコンピュータグラフィックスを駆使して作り上げてきた。
対して、ポンドを全面活用するヒトエリでは、各メンバーの
開発者としての
ハードウェア的な工夫は、ゼータスペック社の協力会社である深センのメイカーが行ってくれている。大脳の活動状況を捉える小型の核磁気共鳴装置から、エンドユーザーからのフィードバックを「肌感覚」として伝えるシルクトロン装置といった隠し味を導入し、概ねの設定するあたりまで。
試行錯誤の末に、中の人は、「リトル」を介し、ポンドの
ヒトエリの活動に協力をしたポンドの運営サイドにとっても、満足できる流れである。コンピュータグラフィックを作成する際の物理演算やレンダリングの負荷を軽減し、環境貢献をするという趣旨をポンドは掲げている。ヒトエリのような活動が広がれば、趣旨に賛同しポンドにコンテンツを提供してくれている制作会社やクリエイターへの成果還元も本格化できることだろう。
万事順調と思われる中、秘かな懸念を
いまだ試験段階にある「リトル」の稼働試験も兼ね、
深センのメイカーが持ち込んだ肌着型装置のシルクトロンからのフィードバックとなる電気刺激にも慣れた
フロントの三人の亜人のグラフィは、プロのダンサーが中の人である。対して、バックダンサーのアマゾネスの中の人は、今の所、運営は明らかにしていないが、かつての人気セクシィ女優たちが主力である。その中に、ひとり異性との接触経験が皆無の
「リトル」の使い方のレクチャー担当を兼ねて加わっているに過ぎない、ダンスの素人である自分に、なせ観客たちから多くの投げ銭が集まっているのか。
研究者として、いくつもの仮説を立てることはできる。第1に、リトルの研究開発者として、
ただ、開発過程で、「リトル」を連用するうちに、いつしか聞こえるようになっていた幻聴との関係も
口々に求愛してくる幻の声が、葵の脳裏に頻繁に響いていたのだ。脈絡なく聞こえるこの幻聴が何を意味するのか全く察しがついていなかった
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