リトル、アイドル、リアリティ ~アイデンティティ拡張型共感覚技術が招く多軸の未来~

十夜永ソフィア零

本編

【あらすじ】

 大脳情報の統合による作業療法支援を研究する牧野葵まきのあおいは、仮想現実支援機器リアリテスを用いた共感覚技術『リトル』を開発中。

 多軸の感覚共有を可能とする『リトル』に、ゲーム会社ゼータスペックの小森社長は新たな入力装置としての可能性を見出す。試験的にバーチャルアイドルグループの振り付けに『リトル』を活用し、好評を得る。技術開発の一貫でメンバー〈亜衣あい〉としてグループに参加したあおいは、断トツの人気となったことに戸惑う。リアリテスの連用で超覚醒状態にあるあおいは、少し未来で高まる求愛の声を幻聴してしまっているのだ。

 また、リアリテスの現実感覚亢進機能はゲーム依存症患者の社会復帰支援への活用が期待されている。コアゲーマーな腐女子でありつつも患者さんに寄り添ったゲーム症治療を行う精神科医サイトウが、リアリテスの国際共同治験に邁進中。彼女は、異世界姫王と女子高生の2つの人格を持つ思春期のお嬢様患者サチの担当医となる。サチの特異な家庭事情もあり、治療的介入は二重人格者同士のダブルスが如き様相に。斎藤に別人格が現れたきっかけも、あおいと同じくリアリテスの長期連用試験を自身に対し行ったこと。

 ライター存在Qが書いたサチの幼少記を読んだサイトウは、サチには治療的介入は不要であるがままであるべきとの仮説を立てる。サイトウは、あおいに、サチの別人格コウに〈亜衣あい〉を共感覚させ影武者とすることを薦める。

 〈亜衣あい〉としてのコウが人気となり、静かな研究生活に戻れたあおいに、小森社長を介し、合気道家と共感覚し多軸の動きを高める新たな入力装置の研究者のポストが提示される。当面は格闘ゲームに用いられるのだが、市街戦向けのサイボーグ兵士への軍事応用も視野に入っていることに迷う、あおい。最終的には若き合気道家倫武の演舞に深い興味を抱いたことで、あおいはポストを引き受ける。研究に着手したあおいに、『あおい、最多の求愛を受ける女性としてギネス世界登録申請』との新たな幻聴が聞こえる。

 

 

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