番外編:年末
『さて、今年も残す所後10分となりました。次の曲を聞いてカウントダウンと参りましょう……美川憲太郎、さそり座の──────』
「よーちゃーん、そろそろ起きないとお友達来ちゃうよー」
「んー……後五分ー……」
ぬくぬくーい……
「むー……あ。えいっ」
「ひゃあぁっ!お、お姉ちゃん?!」
「ふへへ♪可愛らしいぷにぷにのお腹が見えてしまったのだ。許せ」
「許さぬ!千保お姉ちゃんのお腹も触ってやるー!」
「ちょっ!よーちゃんそれだけは──────」
ムニッ。
「む……千保お姉ちゃん、少し太った?」
「うぅぅ……仕方ないじゃんっ!だってよーちゃんの作る料理が美味しいんだから!毎年冬に太ったのを夏までに落とすのがどれだけ大変か知らないくせにー!かくなる上はよーちゃんのお腹も揉んでやる!」
「それ悪いの食べすぎてるお姉ちゃんじゃん!」
「うっさいやい!この妹はお胸ばっかりに栄養送ってからに!」
「こら、結婚前の子女がそんな戯れをするんじゃありません。それに千代、もうお友達も来るんですから早く髪を整えて暖かい格好なさい」
「はーい」
ゴーンゴーンと遠くから聞こえる規則的で心地いい鐘の音を聞いてこたつの中で寝かけていた私は、お腹を揉んで来た千保お姉ちゃんと戯れてるのを怒ったお母さんにそう言われ渋々準備をし始める。
そして何枚も着込んだ後、最後に上からコートを羽織った所で玄関から声が聞こえてくる。
「「こんばんはー」だぞー!」
「はーい」
「おぉ!ちよよんもこもこだ!」
「寒さ対策はバッチリだねー」
「少し暑いくらいだけどねー」
「貴女は少し冷えただけですぐに体調を崩すんだから、これくらい暖かくしてなさい。宫神宮さん、伊部さん、今日は寒いから気をつけてくださいね。それと、千代の事お願いします」
「「はい!」」
なーんでこの子達はうちのお母さんにそう言われて張り切ってんだ……
「もー!母様二人に余計なこと言わないでよ!ほらいこいこ!」
「あ、千代。ちょっと待ちなさい」
「なにお母さん」
「お友達とのせっかくの初詣です。出店があったらこれで温かいものでも皆と食べなさい」
そう言うとお母さんは私の手に五百円を握らせ、気をつけるのよと送り出してくれた。
「そういや礼二君は?今日は来ないの?」
「ゆーちゃん寝かせてから来るって。なんやかんやあいつもお兄ちゃんしてるんだなぁって」
「なるほどねぇ」
「ても今年は色々あったな!まさかちよよんがあんな大事をやらかすなんて、思っても見なかったぞ!」
「あはははは……でもまぁ、これで安心して来年からは学業に励めるってもんだよ。少しはこれで反省してくれるといいんだけど」
「最初は不安だったけど、最終的には私達にも頼ってくれたし、上手くいって私達も安心だよー」
礼二にもだけど、二人にも本当に迷惑かけたなぁ……私の将来はもう安泰だし、これからは私が皆をいっぱい支えないとね。
そんな風に気持ちを新たに決意を固めつつ、もう冬休みの課題は終わったか、お年玉を貰ったら何を買うか、他のクラスの子が好きな人をデートに誘ったなんて話をしている内に神社へと辿り着く。
「私の家の神社なのに、友達と来るとやっぱ違う感じするなぁ」
「今日はお昼から来ればいいんだっけ」
「うん。2人共ありがとうねー。やっぱお正月は人手が足りなくなっちゃうから」
「巫女さん可愛いから叶奈もやれて嬉しいぞ!」
そう、今日は珍しく綺月ちゃんからのヘルプが入り、お昼から巫女さんのバイトをやる為、皆でこんな夜中に初詣を済ませるべく神社へと向かっているのだ。
パンッパンッ!
「今年こそ胸が大きくなります様に……!」
「いっぱいみんなと遊べますよーに!」
二人共ある意味素直だなぁ……私はそうだなぁ……よし。
「今年こそ、平穏無事に過ごせますように」
各々が各々の願いを小さく口にしながら、私達は初詣を済ませると神社の一角にある出店へと向かい始める。
すると丁度そこで礼二と出会う。
「お、三人とももう初詣は済ませたみたいだな」
「ん、もう済ませたよー。ゆーちゃんは寝た?」
「おねーちゃんといくーって聞かなかったけど、年越しそばを食べてるうちにうとうとよ」
「ふふっ♪可愛いなぁゆーちゃんは……っともうそろそろかな?」
ふと私がそう言うと、今まで継続的に鳴っていた鐘の音が一瞬だけ止まり、次の瞬間一際大きな鐘が鳴り響く。
「除夜の鐘も終わったし、本当に残す所あと数分って感じだね」
「だねぇ」
「今年も早かったな」
「来年もいい年になりますように」
「そうだね……うん。皆、来年もよろしくね!」
こうして、私の一年は幕を閉じたのだった。
昭和TS転生譚〜過去の世界で夢を叶える〜 こたつ @KOTATU64
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