適材適所
「ほんと、千代ちゃんは昔から他の事じゃ誰よりも上手くやれるのに、自分の体調管理だけは下手っぴだよねぇ」
「うっ」
「ほんとだぞ。もし叶奈達が居なかったら今頃他の先生達がちよよんを病院送りにしてたぞ」
「ううっ」
「それを言うなら搬送だろ。ったく、タダでさえ体弱いんだから、少しでもキツいと思ったら休めっていつも言ってるだろ」
「うぅぅぅ〜……だってぇ────」
「「「だってじゃない」」」
「はぁうぅぅ〜……」
体育祭を一ヶ月後に控えたある日のお昼休み。
本格的に体育祭の練習が始まり、連日行われていた二、三時限分の練習が祟ったのか、案の定ぶっ倒れた私は保健室でブルマ姿のままベッドで皆から説教を受けていた。
「むー……」
皆してそう怒らなくてもいいじゃん。
私が体弱いのはもう最初から周知の事実だったけど、だからってそれに甘えてちゃダメなのに。
だから頑張って皆と色々頑張りたいのに……
「……ぐすっ」
「えっ、千代ちゃんが……泣いた?」
「あのちよよんが……涙を?」
「これは凄く珍しグフッ!ちょっ、千代。そんな思いっきり脇腹どつかなくても……」
「れいじ、きらい」
「ちょ、ちょっとからかっただけじゃないか。な?なっ?あれ?千代?千代ー?」
暫く無視してやる。
「まぁまぁ皆落ち着いて。花宮さんだって、みんなと一緒に体育祭を楽しみたいから頑張って練習してたんだよね?」
忘れかけていたものの、最初から私達のそんなやり取りを見ていた先生にそう言われ、私はぐすっと鼻を啜りながらこくりと頷く。
「いい事言った風ですけど、小学生の頃からの付き合いなんだからもっと早く千代が倒れる前に気付いてあげてくださいよ」
「ほんとだぞ!せんせーはいつもどこか抜けてるからな!」
「うぐっ……容赦ないねぇ君達本当…………ま、そういう事だからあんまり花宮さんを責めないであげて?それと花宮さん」
「?」
「昔、お仕事手伝ってくれてた時に「人は適材適所、その個人が最も役立つ場所に就かせて上げることが大事だ」って教えてくれたでしょ?」
そういやそんな事言ったような……今思えば中学生らしからぬセリフだなぁ。
「そして先生はその場所を見つけるには絶好の役職でしょう?だからね……」
ーーーーーーーーーー
「んっ、んぅ……あー、あー」
「お、準備万端みたいだね。それじゃあ通しの練習だけど、花宮さんよろしくね」
「はい!」
よーし息を吸って……吐いてー……うん、行ける。
『それではただいまより、第十八回体育祭練習を開催致します』
こうして、私はこの体育祭において、全体の実況や司会進行を務める事になったのであった。
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