変化

「「ばばんばば〜♪」」


「千代ちゃんとお風呂なんてどれくらいぶりだっけ〜」


「一年ぶりくらいじゃない?お姉ちゃん、全然帰ってこないもん」


「ごめんってー。所で千代ちゃん、お昼の時も思ったんだけどその……また一回りおっきくなった?」


 改めてこう見ると、私の妹達のは余りにも大きすぎると思う。

 なぜそのひとカップ程度すら私には回ってこないのか。


 引っ越してきてもうそろ二年になるアパート、その近くにある銭湯の中で、私は隣で一緒に湯船に浸かっている妹のぷかーっと浮いているそれを見ながらそんな事を聞く。


「ん?あぁこれ?気の所為じゃない?中学校入ったばっかりの時と違って三年の時一回しか入らなくなって買い替えてないし」


「入らなく……買い替え……そういや今日買ったの確かアンダー65のFとかだったような……」


「お姉ちゃん?」


「あ、いやっ!なんでもないよ!というか、そんなに大きいと肩こるんじゃなーい?」


「そりゃあもう、バッキバキだよー」


 むむぅ……自覚はないかもだけど大きい自慢しおってからに……!

 いつもはかわいいかわいい妹でも、その煽りは許せん!


「どれ、それじゃあお姉ちゃんが肩もみしてあげよう!」


「ほんと?わーいやったぁ♪」


 ただし!ちょっとばかし痛いのだがな!

 でもほんとにちょっとだよ?ちょっとだからね?だって可愛い妹だもん。


「それじゃあいくよー?せーのっ、えいっ!…………あれ?」


「?お姉ちゃん、もっと強くやってもいいよ?」


「え?あっ、うん!ふぬぬぬぬぬぬ!」


「あぁーいい感じいい感じ。さすがお姉ちゃん、丁度いい塩梅できもちいいよぉー」


 これっ!私の全力って言ってもいいくらい力入れてるんだけど?!まさかこんな、全身つやつやぷにぷにの千代ちゃんの肩だけがガッチガチだとは思わなかったよ!


「あぁ〜♪もっとぉ〜、最高ぉ〜♪」


 でもっ!凄く気持ちよさそうっ!これはお姉ちゃんとして!応えてあげくてはぁ!


 こうして私は、可愛い妹の為にせっかく流した汗を再び流したものの、なんだかスッキリとした気持ちでお風呂から上がったのであった。


 ーーーーーーーーーー


「やーん!かーわーいーいー!」


「ずっと思ってたけど、私ももうそこまで子供じゃ無いんだよ?小学生低学年とでも勘違いしてない?」


「何を言われようと千代ちゃんは私にとって何時でもお姉ちゃんって慕ってくれるかわいい妹だもん」


「んむぅ……」


 照れてやるせない感じになってる千代ちゃんもかわいいなぁ〜♪

 新しく買ったイルカのパジャマも合わせて本当に可愛い♪


 よしよーしとちょっと拗ね気味な千代ちゃんを自分の膝に座らせ頭を撫でながら、私はたった1年程でなんだか大きくなった妹の背中を、感慨深い気持ちで眺める。


「ねぇ千代ちゃん、私が家を出てからたった一年くらいしか経ってないけど、随分と変わったね」


「そう?」


「うん、だって私が家にいた頃の千代ちゃんは確かに可愛かったけど、こんな堂々と女の子ーっていうのを全面に出した事を思いっきり楽しむ子じゃなかったじゃない」


「あー……んまぁほら、そこは色々あったって言うか?私ももう女子高生だし、昔みたいに俺とか、男の子みたいな振る舞いとか辞めて、女を磨くとかそんな感じのを……」


 なんか答えられない様な事になると早口な千代ちゃんかわいいなぁ〜♪でも……


「少なくともものすごく焦った時以外は俺って言ってなかったし、そもそも男の子みたいな振る舞いなんて全然なかったけどね?」


「はへっ?い、いやそんなはずは……」


「少なくともそこら辺の女の子より女の子してたと思うけどなぁ。お部屋も、お洋服も、髪もお肌も、そしてうん、まぁ、うん。全部そこら辺の女の子より女の子だよ、うん」


「うっそぉ……」


「まぁでも、色んなものはお下がりだったし、千代ちゃんがそれに満足せずに、今回自分で選んでくれた事がお姉ちゃんは嬉しいかな」


「お姉ちゃん……」


「昔から千代ちゃんは、何処か女の子したがってない感じはあったし、今も多分あるんだと思う。だからね?無理して女の子っぽく振舞おうってせず、お姉ちゃんは千代ちゃんに自分らしく女の子を楽しんで欲しいな」


 私はそう言うと、下から私の事を見上げてくるちょっと辛そうだけど嬉しそうな千代ちゃんの頭を撫でて上げるのだった。

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