女の子ーなお買い物

「さてさて、高校デビューのお買い物と言えばまずここからっしょ!コスメ!」


「校則では禁止されてるけど、それでもやっぱり軽いお化粧用品くらいは持ってて損は無いし、お出かけする時にたまにするだけでも気持ちが上がったりして楽しいもん」


「ほえ〜」


 化粧ひとつで気分が変わるってどっかで聞いた事あった気がしたけど、お姉ちゃんが珍しく語るって事はやっぱり変わるんだろうなぁ。


「それじゃあ妹ちゃんも興味あるみたいだし、まずはお化粧品からね。どうせ千胡ちゃんと同じレベルだろうから私達が色々と教えてあげるわ」


「ちょっ、聡美!?」


「妹ちゃん知ってる?お前のお姉ちゃん、大学入ってまだ短い時小学生の女の子がやるような化粧してアタシ達にたすけてーって────」


「瑞希は余計な事言わなくていいのっ!ほら、千代ちゃん行くよ」


 ゴッ!というなかなかにいい音を瑞希さんの頭を叩いて出した千胡お姉ちゃんに手を引かれ、先ずは何から買うかと話していた私達は化粧品店へと向かい始める。


「とりあえず妹ちゃんは素でも可愛いし、スキンケアもしっかりしてるからナチュラル系の軽い奴で……とりあえず下地とファンデはこれで、グロスはこれとかどう?」


 ふぁんで?ぐろす?したじ?


「こらこらサトー、いきなり色々勧めすぎて妹ちゃん頭にハテナ浮かべてるよ。きちんと説明しながら勧めなきゃ。それに勧めるにしても色々すっ飛ばしすぎ」


「あらいけない」


「えっとね千代ちゃん。簡単に説明すると、下地っていうのは下地化粧っていう化粧の土台みたいなのの事で、ファンデはファンデーションっていう肌の色を均一にする奴よ。それでグロスは色が薄い口紅って感じね」


「ほほー……お化粧って口紅とぱふぱふするやつとなんか目の所に色々描く奴くらいだと思ってた」


「ふふっ。ぱふぱふする奴はフェイスパウダーで、描くのはアイブロウとかシャドウね。それ以外にも色々あるし、お姉ちゃん達とお勉強していきましょうね」


「はーい!」


 ーーーーーーーーーー


「妹ちゃんにはこのペンダントが似合うって。チェーンはシンプルだし、チャームの所も三日月にちょっと宝石あるくらいで大人しい割に可愛いし」


「いやいやいや、それならこっちのブレスレットがいいと思うわ。妹ちゃんは幼い感じがいいんだし、ピンクゴールドのリングにチェーンだなんて可愛い子しか付けれないわ」


「「妹ちゃんはどっちがいい!?」」


「え、えとっ、えとえとっ」


「そもそもどっちも二千円しない安いお店のなんだから、どっちも買えばいいでしょ。それより、千代ちゃんは何か興味あるのある?」


 化粧品店でお買い物を済ませた後、次に私達はアクセサリーや小物なんかを取り扱うオシャレなお店へと足を運んでいた。


 どれがいいって言われても……そもそもアクセサリーも今の今まで自分の持ってなかったし、どんなのがあるのかも知らないんだよなぁ。


「おっとその顔は、大学デビューした当時の千胡ちゃんと同じ顔ね」


「ふぇ?」


「あの頃の千胡は凄かったなぁ。アクセサリーはネックレスとイヤリングしか知らなかったもんな」


「恥ずかしいから言わないでぇー……!」


「あはははははは……」


 まぁ、ウチの三姉妹だとオシャレ担当は千保お姉ちゃんで、千胡お姉ちゃんは真面目担当みたいな感じだったしねぇ。私?私は経営担当です、はい。


「それで、妹ちゃんはアクセサリーどんなの知ってるかな?」


「えっと、ネックレス、イヤリング、ブレスレットにピアス。後はー……ブローチとか?」


「お!妹ちゃん、お姉ちゃんよりアクセサリー知ってるじゃん!すごいすごい!」


「これは千胡ちゃん程苦戦しなくて良さそうね。でもまぁ、今日はどこにどれをどんな感じにっていうよりも、お店をウロウロして妹ちゃんがコレって奴を選ぶといいわ」


「うんうん。チョーカーとかカフとかリングとかあるけど、せっかく初めてアクセサリー選ぶんだから自分がこれって思ったのを選びな!」


 コレってやつかぁ……んー。正直、二人が選んでくれたペンダントとブレスレットだけでも充分なんだけど……あっ。


「これ、いいかも」


「お、早いねどんなのどんなのー?」


「あら、いいじゃない」


「うん、千代ちゃんに似合ってるよそれ。付けてあげるからじっとしててね……よし、動いていいよ」


「うんっ。えへへっ、どうかな?似合ってるかな?」


 そう言うと私は横髪を耳にかけ、お姉ちゃんに付けてもらった水色と白の小さな宝石と金の縁で出来た小さい花から垂れたチェーンに、一回り小さい同じ花が幾つかついたイヤリングを皆に見てもらう。


「「「かーわーいーいー♪」」」


「えへへへへぇ〜♪」


 こうして私は、初めて自分でアクセサリーという物を選んだのだった。

 そしてその後もお買い物は続き……


 ーーーーーーーーーー


「いやぁー、千代ちゃん可愛くなったねぇ」


「やっぱりお下がりじゃなくて、きちんと自分に合った服だと雰囲気変わるわよねぇ」


「だからってサトーが妹ちゃんに子供用の服を進め出した時は流石にないと思ったけどね」


 いやまぁ確かにそれもびっくりさせられたけど、私としてはまさか下着まで選ばれる事になった方がびっくりだよ。

 全く、元から男に……前世に戻るのは諦めてたし、高校デビューしたら改めて女の子に振り切って生きるつもりだったけど、まさかその最初からこんな事になるとはなぁ。


 これからの時期ににピッタリな明るい色のワンピースやスカート、そしてヒモだったりレースでスケスケだったりなちょっと過激な下着なんかを買われてしまったのだった。


「ほんとはまだまだネイルとかアロマとかも買いたかったんだけど……」


「流石にもうお財布が限界なの……許して……」


「まぁ、あれだけお洋服買っちゃえばねぇ」


「お姉ちゃん……ごめんね?」


「千代ちゃんは気にしなくていいんだよー。元々全額使い切る気で居たんだし、お祝いもウチじゃご飯くらいだからね」


「千胡ちゃんちって四人兄妹の一人男に三姉妹なんだっけ?家族が多いと仕方ないとはいえ、なんかやるせないよねぇ」


「お兄ちゃんでも弟でも、子供に男が居ると親って女の方のそういう事にお金回さなくなるもんねー」


「ウチはまぁ入学祝いとか、そんな感じのある度にご馳走出てくるけど……よくよく考えれば千代ちゃんが用意してくれてたのが殆どだったもんね」


「あれは私お手伝いしてただけだから」


 でも実際、〜〜になったから買ってあげようっていうのは私と千保お姉ちゃんは全く無かったしなぁ……まぁ子供四人も居て稼ぎがお父さんだけならお金に余裕はないよね。


「まぁ確かに男の子至上主義だったけど、それでもお父さんはいい人だし、お母さんも厳しいけど優しいし、実家での暮らしが嫌だった訳じゃないけどね。かわいい妹達が居たし」


 そう言ってふふふと笑う千胡お姉ちゃんを見て、私はほっとしつつも笑顔を浮かべるのであった。

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