寝たフリ抱っこ
「つ、ついたぁ……」
「おつかれ綺月ちゃん。はい、お水」
「んくっ、んくっ、んくっ……ぷはぁっ!千代ちゃんありがとー。にしても……叶奈ちゃんはともかく、千代ちゃんよく疲れて無いねぇ」
「ふっふーん♪そりゃあ毎日お店でお手伝いしてますから!」
「うちも神社やってるけど、やっぱり商店街のお店ともなると段違いなんだねー……所で礼二君は?」
「あー……礼二なら、あっちでぶっ倒れてるよ」
出発して数時間後、山頂にて少し遅れてきた綺月ちゃんに水筒を渡しながら、そう言って私は倒れてる礼二達男子組の方を指さす。
「ったく、ほんと男子って子供なんだから。ちょこっと他の班の男子に煽られたからって、あんなにムキになって走らなくても……」
「あはははは……」
まぁ正直、私としては礼二ならともかく他の男子がずーっとおっぱいばっかりみてくるし、鼻の下伸ばしながら話しかけてくるし、どちらかと言えば助かったんだけどね。
「礼二に感謝」
わざわざ気を使ってくれたのかな?流石、私自慢の幼馴染だ。
「後でお礼言っとかないと」
「ん?千代ちゃん何か言った?」
「んーん、何もー。さて、それじゃあ後五分きちっと休憩して後半戦も頑張ろっ!」
「おー!」
「お!やっとみやみや来たのかー!こっちの景色凄いぞー!」
「はいはい、今行くよー。千代ちゃんも行こっ」
「りょーかい」
そんな風に返事をしながら、手招きをする叶奈ちゃんの元へと綺月ちゃんに手を引かれつつ、私はついて行き暫く頂上の景色を堪能したのだった。
そして日は暮れ夜となり、自然の家へと戻り夕食やお風呂を済ませた後の事……
どーしてこうなったし俺ぇぇ!
「ねぇねぇ、あれって千代ちゃんじゃない?」「おい、花宮さん抱っこしてるのって桜ヶ崎か?」「くっそ、羨ましいなぁ……」「いいなぁー、私もお姫様抱っこされてみたいー」
皆の前を礼二にお姫様抱っこをされているという状況に、私は思わず内心素が出てしまいながら、この状況を飲み込めずにいた。
なぜこのような状況になったのかそれは至って簡単な事で、日中の登山の疲れが出たのかお風呂上がりに休憩所で休んでいる所を礼二に見つかり、こうなったのである。
礼二のバカバカバカぁ!
たまたま目を瞑ってただけなのに「寝てるのか?ったくしゃあねぇなぁ」じゃないよ!しかも、しかもさ!それから躊躇なくお姫様抱っこするとか馬鹿じゃないの?!
そのせいで起きてるって言いそびれたし!
というか……
「礼二君にお姫様抱っこして貰えるなんて羨ましいー。あの二人ってどんな関係?」
「産まれた時からの幼馴染だってさ。いいなー、私も桜ヶ崎君の幼馴染になりたかったなぁー」
「ねー。背も高いし体付きもいいし、それにイケメンだしぃー」
なんかこいつ女ウケ良くない!?
確かに、背は百と八十くらいあるっていってたし、小さい頃からスポーツと家の金物屋の手伝いやってた上に今でも筋トレしてるから体付きもいいし、それに……まぁ、顔も悪くないし?
「かぁー……アイツほんと羨ましいわ。花宮さんとあんな事するような仲なんだろ?」
「花宮さんみたいな可愛い子にあんな事してぇ」
「小さくて可愛いし、頭もよくて……それに毎日あんな美味そうな弁当手作りしてるくらい料理も上手なんて……俺もあんな彼女が欲しいわ」
うぅぅ〜……礼二がこんなことするからぁー……
「……ちっ、やっぱ千代は……いや、それでも俺は」
……ん?礼二何か言ったのかな?ちょっと良く聞こえなかったんだけど……って止まった?
「はーい……ってあら?礼二君?」
「おー!れーたろーだー!」
ん?この声は……
お姫様抱っこのまま、揺れが止まったのを感じた私がどうしたのだろうと思っていると、ふと扉が開く音と共に聞きなれた二人の声が聞こえてくる。
そしてそのまま二人と礼二の会話を聞いた後、女子部屋に入ったのか少しだけ動いてからようやく礼二の腕から布団に下ろされたのか、何かに寝かされる感覚を感じる。
「それじゃあ礼二君、また明日」
「明日も遊ぼうなー!」
「おう、それじゃあな」
よ、よし。やっと礼二の奴帰ったな!いやー酷い目に────
「……さて、それじゃあ寝たフリしてイチャイチャしてきたこのお姫様をどうしましょうかね」
「顔真っ赤にするまでからかうのがいいと思うぞ!」
「す、すぅー……すぅー……」
そして私はそのまま、そんなとんでもない罰を与えようとしてくる二人から逃げるべく寝たフリを続け、そのまま眠りに落ちたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます