春の青春
「にしても、本当によかったのかちよよん。イルカとシャチのぬいぐるみ持ってこなくて。夜寝れる?」
「ぬいぐるみ無くても寝れるよ!というかそもそも持ってきたらダメでしょっ!」
一瞬で没収された挙句お説教コースになるよ!
「でも千代ちゃん私達とお泊まりする時にも何か必ずぬいぐるみ持ってきてたよね?本当に大丈夫?」
「んもー!綺月ちゃんまで!大丈夫って言ってるでしょっ!」
誰もが人生で濃密な時間を過ごすであろう高校時代、その最初の一年の更に最初の方、私達はガヤガヤと賑やかなバスに揺られ山奥のある場所へと向かっていた。
「にしても……まだつかないんだな!」
「確か青少年自然の家……だっけ?こんな山奥にあるんだねぇ」
「身も心もワンランクアップ!とかいう、当たり障りの無い広告文句みたいなしおりだけど、一応これ新入生の宿泊合宿研修だからねぇ。いつもと違う環境って意味なんじゃない?」
土地を取るからでもあるんだろうけど前世の高校の時も山奥にあったし、そういった環境に意図して建てられているんだろうなぁ。
「というか、この時代にこの行事がもうある事に私は驚きだよ」
「「?」」
「なんでもなーいよ。ほら、見えてきたみたいだよ二人共」
「えっ!どこだどこだ!」
「あれかな!?うわぁー!」
バッと森を抜け、少し遠目に見えた今まで見た事もない大きな建物を見て更に賑やかになるバスの中、私はこれから始まる三泊四日の研修に胸を躍らせるのだった。
ーーーーーーーーー
「それでは十分休憩!その後もう一度通してやるぞ!」
「「「はーい」」」
「はふぅ……初日から思ったよりもきつくて流石の叶奈もちょっと疲れたぞー。」
「私もー。うちの高校の体操がこんなにきつい物だとは……」
「ねー。でもまぁ、それでも男子よりはまだ楽なんだろうけど」
あの後クラスの男女毎に別れた部屋に荷物を置き、体操服に着替えた後体操の練習をしていた私達は、そう言うと礼二達の居る男子の方へ目を向ける。
するとそこにはまさに死屍累々と言わんばかりに仰向け、うつ伏せ、様々な体勢で男子達が倒れ込んで居た。そして勿論、その中には礼二もいた。
「私達は柔軟?みたいなのだけれど、男子はそこ組体操だもんねぇ……」
「二、三人でやる程度の小さいのだけれど、それでも五連続はなかなかねぇ」
「叶奈はあれやりたかったぞぉ!」
「ははは……元気だねぇ叶奈ちゃんは。所で、今日はこの後どんな予定だったっけ」
「休憩明けに体操、その後は夕ご飯食べて、で確か────」
「肝試しだぞぉ!」
「んなっ?!」
きっ、肝試しぃ!?
驚かすように横から現れた叶奈ちゃんにそう言われ、私はそう悲鳴にも似た驚きの声を上げてしまうのであった。
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