高校生編
桜舞い散る「私」の始まり
「ほらよーちゃん早くっ!こっちこっち!」
「えぇ〜。別にいいじゃん。お父さんだって流石に二人でもう撮り尽くして満足してるって」
「そんな事無いって!ねっ、おとーさんっ」
「あぁ、目に入れても全く痛くない娘達の晴れ姿、いくら撮っても撮り足りない位だ……!」
「んも〜……」
別にこれから毎日見る事になるんだし、別にいいじゃんか。
四月の頭、桜の花弁がヒラヒラと舞い散るこの季節、玄関前に立たされお父さんに写真を撮られている「私」は、丈膝程の紺のスカートに大きな襟という、前世でも熱狂的な人気の制服の一つであるセーラー服に身を包んでいた。
まぁ私も初めて試着で着た時は「あぁ……!俺がセーラー服を合法的に世間的になんの問題もなく堪能できる日が来ようとは……!」って興奮したけれどさ……
そんな私が何故こんな場所でこんな格好をしているのかと言うと……
「流石にもういいでしょ「お父さん」!もう時間的にもそろそろやめてくれないと入学式遅刻しちゃうんだけど!」
「おぉっ?!も、もうそんな時間だったのか……なら千代、あと一枚、最後一枚だけ!」
「あーもう分かった!分かったから早く撮ってよね!」
そう、今日は私の、前世を含めれば七回目、人生で最も短く、しかし輝いている時代と言っても過言ではない高校時代の幕開けたる入学式の日なのだ!
「いやぁー……でももう千代も父様じゃなくてお父さんなんだよなぁ……もう小さな子供じゃないって事なんだがなんだか寂しさが……」
「身長は、小さいままだけどねー。身長は」
「うっさいっ!というかもう時間がないんだってばっ!ほらもうお父さん写真撮ったでしょ?!そんな浸ってないで早く車出してってば!」
「これが反抗期って奴か……あの可愛い千代がなぁ」
「んなぁぁぁぁあ!だからそんなんじゃないってば父様っ!」
「ふふっ、素が出ちゃってるぞよーちゃんっ」
初日からこんなドタバタだなんて……この先大丈夫なんだろうか私の、JKとしての高校生生活は……
「はぁ……不安だ」
こうして、私の家では珍しいドタバタとした状態で、この貴重な時間は過ぎてゆくのであった。
ーーーーーーーーーー
「でさー」
「ほんとにー?」
「はぁ……はぁ……はぁ……ごめん二人共!ちょっと遅れたっ!」
「おっ!珍しくギリギリだったなちよよんっ!」
「いつもの千代ちゃんならこういう日は十分前には来てるのにねー」
ぜーはーぜーはーと息を切らしつつ、仲良さげに雑談していた私と同じ制服の二人の元へとかけよった私は、二人に対して肩で息をしながらそう謝る。
すると片方は元気よく、もう片方は優しく、いつも通り私の事を迎えてくれた。
「にしても……二人は変わらないねぇ。叶奈ちゃん綺月ちゃん」
「いやいやいや、千代ちゃんには負けるよー」
「なー。ちよよん小学校から一箇所以外全部変わってないもんな!」
「なんだぁ?喧嘩かぁ?」
「痛い痛いいたいぃー」
グリグリと綺月ちゃんと叶奈ちゃんのつむじをやりながら、私は久しぶりに合った何も変わらない二人とそんなやり取りを行うと入学式の会場へと向かう。
「でもまさか本当に二人がこっちの高校に来るなんてなぁ……」
そう、実はこの二人お家がお家なだけに元はこの共学の高校ではなく、もっと都内の方にあるお嬢様学校に行く予定だったのだが……
「だって千代ちゃんが居ないなんて想像できないしねぇ?」
「なー!それに女子高、オジョー様学校なんて叶奈には似合わないぞぉ!」
「あはははは……まぁ、私も二人が居てくれると気が楽だし嬉しいからね」
私がこの共学の学校に行くと決まり、二人もご両親に違う意味で無理言ってこっちの学校に来てくれたのである。
「ま、高校でもよろしくね二人共」
「こっちもよろしくねー。千代ちゃん」
「嫌って言っても付きまとうぞぉ!」
「ふふふっ、頼もしい限りだよ二人とも」
こうして、私の高校生としての日々は幕を開けたのだった。
「ちょっ、お前らっ!俺の事忘れてねぇか!?」
「あ、礼二」
「れーくんおはよー」
「居たのかれーたろー!」
「おいっ!流石に酷くねぇかそれは!?」
「あはははは……ま、とりあえず行こっか皆」
「「「おー!」」」
勿論礼二も共に、である。
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