先生と私
『これにて、第~~回卒業式を閉式致します』
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「と、まぁ。こっちの卒業式は平和に終わりましたよ。先生」
「いやーよかったよかった!こっちも無事何とか────は、花宮さんのおかげで何とかなったよ」
「ったく、なんで先生はそう大事な時に限って計画性が全くないんですか。確か去年も手伝った記憶ありますよ?その先生からの言葉」
「あはははははは……」
俺に痛い所を付かれたのか、そう苦笑いをする去年の今頃会ったぶりな小学生の時にお世話になった例の先生と、俺は久しぶりの甘味処あじさいでそんな話をしていた。
「でもほら、そのお礼にこうやってケーキ奢ってあげてるんだから……ね?」
「ね?じゃありません。私だってもう四月からは中学校三年生、受験生なんですから。あんまり頼られると困るんですー」
「マスター!花宮さんが冷たいー!」
「貴方のその大事な時に抜ける癖が行けないと思いますよ」
「ぶーぶー。マスターも花宮さんの味方なんですねー」
いい歳こいて子供相手に何やってんだこの人は……というかマスターが喋る所久しぶりに見た気がする。
「まぁでも、来年からはそういった事も減ると思うよ」
「それはどういう事で?」
「良くぞ聞いてくれた花宮さんっ!実はっ!今年私はっ!高校教育免許取得しましたー!」
「おぉー!」
そう言って立ち上がった先生が、俺に向かって突き出してきたその高校教師の教員免許を見た俺は、そのおめでたい事にパチパチパチと拍手しながらそう声を上げる。
これは普通に凄い!それにめでたい!
「マスターマスター。先生にお祝いケーキを一つ。これは私持ちで」
「はいよ」
「えっ?!いいのっ!?」
「そりゃあおめでたい事ですからね。これくらいはさせてください」
「花宮さん……!」
「ん?でも確か高校教師の免許って高校に行って二週間くらい実習するんじゃなかったような……?」
「ぎくっ!」
「でも普通小学校教員ってそんな二週間も休みが貰えるなんて事普通は無いですよね?……先生?」
「じ、実はそのー……今年学級閉鎖が起こった時にちゃっかり取ってきました!」
「んなっ!?」
こっ、この先生……!学級閉鎖というと俺が風邪引いたあの時期か!この人はなんとまぁ……
「だってだって!やるならここしかないって思ったんだもん!」
「もんってなんだもんって!先生なんだからもっと生徒の事を考えて下さいよ!」
「その点は大丈夫!ちゃんと小学校の仕事もやってたし、子供達のお見舞いにも学校終わってから行ってたから!」
それならまぁ、うん。公務員としてはあれだけど、一教員としてならまぁ、うん。
どうやってそんな時間を確保したのかと問い詰めた俺は、先生のその衝撃の一言に思わずそう思わざるを得なかったのであった。
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