どんど焼き
一月の十五日、冬休みも終わり少したったある日、俺は餅を、礼二はしめ縄を持って白い息を吐きながら、街の公園へと楽しげにお喋りしながら歩いていた。
「でね、そこで父様がビシッと勝ってくれてねー」
「へぇ。それじゃあ今年は結構儲けたんじゃないか?」
「ふっふっふっー!その通りー!今度イルカの抱き枕買うんだ〜♪」
「まだ増えんのかあの部屋のやつ……もう要らんだろ」
なんて事を言うんだこいつは!
「シャチとイルカのグッズはいくらあってもいいのっ!それにお古はお古で優香ちゃんにあげられるし!」
「いやまぁウチとしても色々千代とか千代のお姉さん達のお下がり貰えて助かってるけどさ。というか、今年は餅多いな?」
「今年はウチの餅米が豊作だったみたいでねー。父様達も調子出てたみたいでいっぱいついちゃったの」
おかげで未だにお餅生活だよ。まぁ美味しいんだけどさ。
「でも二人でどんど焼きなんて何年ぶりだ?」
「去年は私が風邪ひいちゃってて、その前は大雪で中止、そのさらに前は普通に学校だったからねぇ。だいたい三年ぶり?」
そんなに来てなかったのか……
そんな風に礼二と話しながら、俺は指を折って何年程来てないかを数える。
「にしても毎度毎度思ってるが……うちの街のやつって相当でかいよなぁ」
「十……いや十二か三メートルはありそうだよねぇ」
これを業者に頼んでる訳でもなく、街の皆で作ってるのがまた凄いよなぁ……
珍しく人の沢山いる公園に着いた俺と礼二は、そう言うと目の前にある竹と藁をまとめてで作られた太くて高いどんどやの用意がされていた。
そう、今日は一月の十五日、お正月行事の締めを飾るどんどやが行われるのである。
「それじゃあお願いしますね」
「はいよ!いつもお世話になってる千代ちゃんの頼みなら例え水の中でも森の中でも……燃え盛るどんどやの中でも!」
「頼むからおじちゃんそれはやめてっ!」
ただじゃ済まないからっ!
「はっはっはっ!まぁこの餅は俺に任せとけ、それに断って千代ちゃんの珠肌に火傷跡なんかつけさせた日にゃあ、皆から俺が殺されちまう!」
「またまたぁ。そんな事ないって〜」
父様ならワンチャンありそうだけど他の人からはないでしょ〜。
「あ!千代おねーちゃんだ!」
「おねーちゃんだー!」
「千代おねーちゃん遊ぼ遊ぼー!」
「わっ!わわっ!ちょっ!皆分かった!分かったからー!」
コケちゃうからそんな勢いよく引っ張らないでー!
「相変わらず子供に大人気だなぁ。アイツは」
「おう礼坊、ちょっとこっちこい」
「ん?なんだよ八百屋のおっちゃん」
「お前さん達まーだ進展ないんだな」
「んなっ!?」
「はっはっはっ!まぁおおよそ千代ちゃんが原因だろう?でもまだ中学生だしな!これからだこれから!でもまぁ、絶対に幸せにしろよ?なんせお前が狙ってるのは俺らの千代ちゃん、だからな」
「……勿論だよ、おっちゃん」
子供達に手を引かれながら遊具の方へと連行された俺は、後ろで八百屋のおじちゃんと礼二がそんな話をしていた事など知るよしも無かったのであった。
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