いつもよりも賑やかに

「んむ……やぁ…………」


 突っつかないでぇ……


「……むぅ?」


「あっ、起きた」


「千代ちゃんおはーよー」


 仁奈お姉ちゃんに……美香お姉ちゃん?


「ふふふっ♪きょとんって顔してて可愛い♪」


「あれ?私寝てた?」


「ごめんね千代ちゃん、起こしちゃって。つい寝顔が可愛くってほっぺぷにぷにしちゃった」


 あぁそっか、おじさん達が来る前に料理して、その後皆揃って新年の挨拶してから一通り飲み食いして眠くなって……


「で、気がついたら寝ちゃってたのか…………お姉ちゃん達のお膝の上で」


 お正月のお昼過ぎ、集まった親戚一同が炬燵の向こう側でどんちゃん騒ぎしてる横で、俺は親戚のお姉ちゃん二人に膝枕をされてぐっすりと眠っていた。


「いやー、炬燵で丸くなってる千代ちゃん見てつい」


「交代交代でねー」


「ねー」


 このお姉ちゃん達も仲良いなぁ。


「そんな私のほっぺぷにぷにしてたのしい?」


「だって、ちっちゃくてぷにぷにで可愛いもん」


「うんうん!こんな可愛い子が妹で千保ちゃん千胡ちゃん羨ましいなぁー」


 そんなか?女の子のこういった感覚は未だに分からー……なくは無いな、うん。俺が優香ちゃんに思ったりするのと同じなんだろうきっと。


「父様達はー?」


「千代ちゃんのお父さんだったら向こうでお父さん達と花札やってるよ。負けた人は勝った人の所の子供達に渡すお年玉増やすんだってさ」


 お年玉増額!これは是非とも勝ってもらわねば!


「ちょっと行ってくる!」


 お姉ちゃん達からそんな素敵な情報を聞いた俺は、アニメなら確実に目の中にドルマークを浮かべてそうな程目を輝かせ、父様の元へと走っていく。


「父様ー!」


「お、おぉ、千代か。どうした?」


 ふむ……父様のこの様子を見るになかなか戦況は好ましくない様だ。


「ち、千代ちゃん!今いい所みたいだから邪魔しちゃダメだよー!」


「ほら、一緒に戻ろ?」


 確かにおじさん達しかいない場所は正直普通怖いよねー……まぁ、心配してくれてるお姉ちゃん達には悪いけど、俺はこういう場所に慣れてるし、それに────


「父様!頑張って!」


「……!おう!」


 応援して父様が元気になるとやる気だけじゃなくて、なんだか運とかも上がる気がするんだよね!


「よしきた青タンっ!」


「「「おぉー!」」」


 やっぱり父様って応援すると強くなる!……ん?


「おとーさん頑張れー!」


「お、おう!」


「ぱぱっ!がんばって!」


「!任せろ!」


 おぉ!他の所の子達も応援し始めた!これは俺も負けてられませんな!


「父様!かっこいい所見せてよね!」


「もちろんだ!」


 こうして、いつもと同じような皆でちょっと盛り上がる様な正月の宴会は、花札で遊ぶ父親達を子供達が全力で応援するという、いつもよりも賑やかな宴会になったのであった。

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