酔いどれ聖夜
「だぁ〜かぁ〜りゃあ〜!わらひはわらひで頑張ってるのにぃ〜!」
「お、おう。そうかそうか」
「んふー」
十二月の二十四日、クリスマスイブであるこの日、千代にお呼ばれされお店を訪れ、暫くの間楽しく食事をした後のこと。
ほんのりと頬をピンクに染め、俺の膝の上で呂律の回らなくなった口を一生懸命動かしながら騒ぐ千代の頭を俺は撫でていた。
まさかうちの父さんからの差し入れにお酒が入ってるなんて……というか千代がお酒口にしたのって一口もないくらいだったよな?…………どんだけ弱いんだこいつ。
「んむへぇ〜……んー?れーじどこー?」
「ここだよここ、お前が座ってる所だよ」
「んん〜?あ〜ほんとだ〜!えへへ〜♪れーじだれーじ!」
「っ!」
やべぇ!なんだコイツ!千代って酔っ払うとこうなるのかよ!
「んふふ〜♪れーじすき〜♪大好き〜♪」
「んなっ?!」
「これからもずーっと友達でいてよね〜?」
うおぉ……それは、承諾したくねぇなぁ……
「れーじ?」
「ん、あぁいや、確かに俺ら友達だけどさ。ほ、ほら、そんじょそこらの奴より遥かに仲もいいし、こ……こいっ、恋び────」
「確かに!それじゃあ私達は友達じゃなくて親友だね!」
「……そ、そうだな。うん、そうだな……」
「?」
友達としてとはいえ千代に大好きと言われ思わず舞い上がってしまったのか、俺は大胆にも長年の願いを口に出そうとした所で千代にそう言われ、がっくりと項垂れる。
「まぁうん、わかってたっちゃわかってたよ。うん」
「えへへへへへへ〜♪ねーねーれーじー」
「ん?」
「ぎゅーってしてー」
「はいはい、ぎゅーねぎゅー……」
ぎゅう?
「えっ、えっ!?ぎ、ぎゅーって、えっ?!」
抱きしめろって事だよな?そうだよな!?
「?どしたのれーじ?」
「い、いやなんでも!そ、そのっ、やっていいんだな?」
「んー。ぎゅーしてして〜♪」
「よ、よし。やるぞー……やるぞー!そらっ!」
「んふふ〜♪れーじにぎゅーして貰えた〜♪安心する〜」
意を決して千代のお願いを叶えるべく、後ろからぎゅうっと千代を抱きしめた俺は、無邪気に安心して頭をスリスリして喜ぶ千代とは反対に心臓をバクバク言わせていた。
やっ、やわっ!柔かいっ!こんなに女子って柔らかかったっけ!?というかやばい!スリスリしてくんのすっげぇ可愛い!ダメだっ!これ以上はいかんっ、理性が持たん!
「と、とりあえず千代ももうこんなんだし!今日はもう解散するか」
「んぅ?」
「ほら、パーティーはもうおしまいだ。俺が家まで送ってってやるから帰るぞ」
「はぁーい」
料理は食べ切ったから皿をまとめて……ん?
「……どうした?千代」
「だっこ」
「へ?」
「帰り道だっこして〜」
だ、だめだ礼二、落ち着け礼二、いくら、いくら幼馴染とはいえこれ以上は、これ以上は流石に────
ーーーーーーーーーー
「……それじゃあ、今日はありがとうございました」
「いえいえ、ウチの娘が迷惑をかけてごめんなさいね。また遊んであげてね?」
「はい、それは勿論。えーっと……それじゃあ」
「はーい、また来てねー」
何とか無事に酔っ払い千代を送り届け、千代のお母さんに見送られた俺は、しばらくの間ほんの少しだけ積もった雪道を歩き、千代の家から見えない場所まで行くと座り込み────
「はぁー………………やっちゃったよ」
やってしまったよ……だっこ。
「ったく、あいつのおねだりには適わねぇや…………ほんと、可愛すぎるんだよあいつ。はぁー……ダメだ、やっぱ何があっても俺は千代を諦められそうにないな」
そう寒空の下、笑顔を浮かべながら言うのであった。
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