聖夜の約束

「しっんぐーるべーるしっんぐーるべーる。すっずっがーなるー。今日っはーたのっしいー、クルシミマース」


「なんか所々歌詞が違う気がするんだが……」


「うるさい、こちとらイチャイチャしてるお客さん達の相手にうんざりしてるんじゃい」


 十二月ももうそろそろ終わりに差し掛かり、様々なイベントが増えてくる今日この頃、俺は珍しく学校のお昼休みに礼二へと愚痴を吐いていた。


「だいたい、ウチは雑貨屋だから色々買いに来るのは分かるけど、惚気ける為の場所じゃないってーのっ!リア充共滅ぶべし」


「リア……なんて?というかお前ら女子こそそういう恋愛話的なの好きだろ」


「私は別に好きじゃないもーん。幸せになるのはその人の勝手だけど人様の目がない所でやれっていう話よ!」


 こちとら貴様らのイチャイチャに付き合ってる暇はないんだってーのっ!というか、修学旅行であんな事あったのに、こいつ気にしてないのか!?なんか悔しい!


「まぁまぁ、もう少しでクリスマスなんだし季節物だから仕方ないと思っとけよ」


「そうだけどさぁ〜!はぁーあ、私も彼女ほしいなぁー」


「そこは彼氏じゃないのかよ……と、というか、そんなに誰かと過ごしたいならお、俺が────」


「ほんと!?ありがと礼二ー!」


「えっ!お、おう!任せろ!」


 礼二の心強いその返事を聞いた俺は、ぐわしっと礼二の肩を掴むと────


「さっすが礼二!これで今年のクリスマスパーティーも安泰だ!」


「へ?」


 キラキラと目を輝かせ、意気揚々とそういうのであった。


 ーーーーーーーーーー


「んで、クリスマスパーティってなんだよ」


「いやー、実は毎年叶奈ちゃん綺月ちゃんと一緒に閉店した後、ウチのお店でクリスマスパーティやってたんだけどさ」


「毎年?」


「そ、小学生高学年の頃から毎年」


「そんなことやってたのか……」


「綺月ちゃんは家が仏教徒と神道だし、叶奈ちゃんの家はクリスマス当日お父さん達お仕事で居ないからね」


「はぁ……そうだったんだな」


「礼二は普通にクリスマス家で過ごしてたからね、知らなくても仕方ないよ」


 学校からの帰り道、あの後お昼休みが終わり、中途半端な所で話が終わっていた俺は、礼二に何がどういう訳かを一から説明していた。


「とまぁ例年ならそういう事で集まってクリスマスパーティしてたんだけど……」


「今年は二人揃って当日来れなくなった、と」


「そうなんだよー!もうお小遣い使って食材の仕入れとか済ませておいたのにぃー!でも家族が一番だからそっち最優先にして欲しいー!」


「なんか、途中までは在り来りな理由だったけど、最後ので一気にお前って感じが出たな」


「む、なんだよそれー」


「さぁ、なんでだろうな、千代」


 ドキッ。


 な、なんだ今の!?今礼二に名前呼ばれた時にドキッてした!ドキッてした!!これなんだ!なんだこれ?!


「ん?どうした?」


「な、なんでもにゃっ……なんでもない!と、とにかく!タダ飯喰わせてあげるから楽しみにしててよね!」


「おう!千代の料理は美味いからな、楽しみにしてるぜ!」


「っ〜!」


「いてっ。いててっ!なんで叩いてくるんだよ!」


 こうしてクリスマス前の寒空の下、俺と礼二は二人きりのクリスマスパーティの約束を交わしたのであった。

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