姉妹の共同制作

「それじゃあまた来るよ!」


「ありがとうございましたー!」


「よし千代、店閉めるぞー」


「はーい!」


 いやぁー!今日も売れた売れた!だいたい一週間ぶりだったけど上手くできてよかった!


「よし、戸締りも終わったな。にしても千代、帰ってきて早々店を手伝わなくても、今日くらい休んでも良かったんだぞ?」


「えへへへへ。でも試したい事があったから!それに疲れてもいないし大丈夫っ!」


 三泊四日の修学旅行から戻り、早速お店の手伝いをしていた俺は、そう言うと父様に頭を撫でられながら自信満々に胸をはる。


「にしても、今日の売上はいつも以上だったな。これもその売れる戦法ってやつか?」


「まだ一日目だから、上手くいってるかはわかんないけどね。でも少しくらいは影響あったんじゃないかな?」


 そう言うと俺は一見何も変わってないように見える様々な商品のある商品棚を眺め、その修学旅行先で気がついた小技の成果を見て満足気な表情を浮かべる。


「売れる商品はぎゅっと詰める!反対にそこそこな商品は少し商品の間を開けて明るめのポップを付けて取りやすい雰囲気を!これで全体的な売れ行きが少しは伸びる……はず!」


 これぞお土産屋さんから学んだ商品陳列術!


「まぁまだ一日目だしな、これから見ていくしかないさ」


「だね!効果あるといいなぁ」


「きっとあるさ。ただまぁ、今日の所は皆久々に千代と会えるからってのが多そうだが」


「ん?父様何か言った?」


「いや、何も言ってないよ。よし!それじゃあ売上もよかった事だし、千代も修学旅行お疲れ様って事でラーメン食いに行くか!」


「ラーメン!わーい!」


 ーーーーーーーーーーーーーー


「けぷっ」


 おなかいっぱーい。やっぱあのラーメン屋本気で美味いわ。


「いーなー、いーなー、よーちゃんラーメン屋いいなー」


「お店のお手伝い頑張ったからだもーん。というか、食べたいなら千保お姉ちゃんもお手伝いすればいいのに」


「やーだぷー。そもそもウチに接客は向いてなーい」


 案の定母様にお小言は言われたものの、あの後父様と一緒にラーメンを食べて帰ってきた俺は、むぎゅうっと千保お姉ちゃんに膝の上に乗せられて抱っこされていた。


「にしても、よーちゃんよくそんなひと工夫思いつくよねー。前世の記憶?」


「まぁねー。でも流石にやっぱ色々足りなくてさ」


 今の雑貨屋状態でもまだ色々あったらいいなぁって物もあるのに、もし飲食店を開業するとしたらもっと色々足りないもんなぁ。


「そんなに足りないの?」


「まぁねー、機械なんかは基本的なのがあるからまだいいけど、他の細々とした道具があると便利でいいんだよねー」


「例えばどんなの?」


「例えば?そうだなぁ……」


 観光飲食店だからガッツリとした飯所ってメニューは合わないだろうし……


「パフェとか食べる時用のこれくらいの長さのスプーンとか?」


「スプーンねぇ……もしかしたら作れるかも?」


「へ?」


「いやウチの知り合いにちょっと心当たりがあって……今度あったら頼んでみるよ!」


「ほんと!?ありがとー!」


 ダメ元でとりあえずもしお店やるならあった方がいいなぁと思った物を言った俺は、千保お姉ちゃんからの思いもよらない返答に思わずぱっと笑みを浮かべるのであった。

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