看病から出た本音
まぁ案の定……
「デスヨネー」
「暑くて眠れないのは分かるけど、体壊してるんだからきちんと安静にしてなさい」
「ハーイ」
川遊びの翌日、昨日の疲れが出たのか案の定寝込んでいた俺は、眠れずにいた所を様子見に来ていた母様にそう突っ込まれていた。
「全くこの子ったら……」
「エヘヘヘヘ。でも昨日の川遊び、楽しかったなぁ……」
なんかやたら礼二に見られてる気はしたけど……まぁ気の所為でしょ。
「ふふっ、皆大喜びで用意したお肉食べてたものね。なんならお野菜も残さず食べてたし、浩さんも用意した甲斐があったって喜んでましたよ」
「…………あれ父様が用意してたんだ……」
てっきりというか絶対母様が用意したものだと思ってた……
「最近貴女達と遊べてなかったからかしらね?千代が浩さんもって誘った日の夜に色々用意してやりたいから教えてくれないかって言ってきて……ふふっ、可愛かったわぁ」
「えー、いいなー。私も見たかったー」
「あらダメよ。あの人のそう言う可愛い姿は母様だけのものです。それに貴女達はかっこいい父様だけを見てればいいんだから」
「ぶー、ケチんぼー」
「女の子がそんな言葉使うもんじゃありません」
「あてっ。ちぇー」
母様からそんな超激レアな父様の話を聞いた俺は頬を膨らませつつそう言うと、母様に軽くデコピンされてしまうものの母様の楽しそうな顔に思わず笑みを浮かべる。
飽きたからとか合わなかったからとかいって別れる人は前世で沢山みたけど少なくとも二十年、その前のお付き合い期間とかも考えれば三十年は一緒に居るのにずっとラブラブなのって凄いよなぁ……
「なんなら普通に憧れるんだよなぁ……」
男と結婚するなんて想像も出来ないけどさ。
「……ねぇ、千代」
「んぅ?」
「実はね、昨日皆と可愛い水着を着て遊ぶ千代を見て母様安心したの」
「ほへ?」
「昔から貴女、可愛いものはそこら辺の女の子と同じかそれ以上に好きだったけど、自分を着飾ったりする事……というか、女の子らしい事に抵抗があったでしょう?」
なっ?!なんで知って?!いやっ、それよりも……
「そ、そんな事無いよ?かーさまったら何言ってるのさー」
「別に怒ったりしないから大丈夫よ。スカートは勿論、ブラジャーにも抵抗があったのは知ってるし、それに貴女が一人でいる時は俺って言ってる事も知ってるんだから」
「うぐっ……」
まさか知られていたとは……
「流石に女の子として自分の事を俺って言うのは良くないから、せめて一人の時だけにしなさいね?」
「はーい……」
「よろしい。っと、ちょっと話が逸れちゃったわね」
今まで必死に隠して来たと思っていた事が実はとっくの昔にバレていたことにショックを受けつつ、俺の返事を聞いた母様が話し始めた話の続きに耳を傾ける。
「それでね、もしかして女の子として産まれたこと嫌なんじゃないか、このままじゃ将来幸せになれないかもしれないって思ってたの」
「母様……」
「そういう人が居ることは知ってるしね。でもね、最近は貴女も思春期になったのか色々気にしたりするようになったでしょ?それで昨日の貴女があんなに可愛い水着を着てるの見て、この子も自分なりに女の子の人生を楽しんでたんだって分かったの」
「……」
「こんな変な事私らしくないわね。でも私ね、本当に昨日のあなたを見て嬉しかったの。だからね、これからもどんな形でもいい、貴女が幸せになれる人生き方で生きなさい」
「母様……」
「さってっと、柄にもない変な事話しちゃったわね。それじゃあ大人しく寝てるのよ?」
そう言うと母様は見たことも無い程優しげな表情で俺の頭を一度撫でるとそう言って立ち上がり、俺の部屋を後にしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます