ラブレターとデート
むっふーん。
「むっふふーん」
「お、おう……どうした?休み時間にいきなり……」
「ふっふっふー、鈍感なれーじ君にはわっかんないかなぁ」
「いや、少し髪の毛切ったのはわかるがお前にだけは鈍感って言われたくないぞ」
「問題出しといた俺が言うのもなんだけどなんで毛先整える程度しか切ってないのに気付くんだ。怖いよ」
ある日の休み時間、先日千保お姉ちゃんに毛先を整えてもらった俺は、礼二にそんなめんどくさい問題を出しておきながら一発で当てられ若干引き気味になってしまう。
「自分から聞いておいてひっどいなおい。んで、なんの用だよ?」
「いやー。実はさ、今日の朝靴箱にこれがあってさぁー」
「ちょっ?!おまこれっ!」
「てってれー、らーぶーれーたーあー」
説明しよう!これは今朝私の靴箱に入っていた学園モノの定番である!そして人前でこれを出すとその持ち主は死ぬ程恥ずかしい思いをするのだ!
「お前って奴は……人の心がないのか?」
「んなわけないじゃん」
流石の俺もそんな外道じみたこと道楽でやんないよ。
「誰が私にこれを出したか確認するためにやってるんだけど……どうやらこのクラスには居ないらしいねぇ」
となると出したのは俺のクラスのやつかぁ……
「もし居たとしても流石に平静を装ってると思うぞ。保てるのならだけど」
「まぁねぇー」
欲しかった収穫が得られず、俺が礼二に適当な返事をしながらぽにゅっとほっぺを机の上に乗せていると、ふと礼二が不機嫌なように見えた。
「ほひかひへ、へいひふひへん?」
「なんて?」
「もしかして礼二不機嫌?」
「なっ!そんな事ねぇよ!バカ言ってんじゃねぇ!」
「うわっ?!わ、悪かったよ!からかったのは謝る、謝るからさ!そんな怒らないでよ?ね?」
「……あんまりふざけるのもそこそこにしとけよ」
「はーい」
はぁー、怖かったぁ……あそこまで本気気味に怒った礼二は初めてみたよ。
まぁ今回はさすがにふざけ過ぎたかなぁ…………いやでもあそこまでキレるって事は────
「もしかしてこれって礼二が……」
「それ以上ふざけた事言うならほっぺためっちゃ引っ張るぞ」
ガチギレしてらっしゃるっ!
「勘弁してくださいなんでも言う事聞きますから」
だからほっぺ引っ張るのだけは勘弁っ!俺はほっぺだけは弱いんだ!
「んん?今なんでもって言ったか?」
「あ、やばっ」
焦ってとんでもない失言してしまった!ヤバいヤバい急いで撤回を────
「それじゃあ千代、次の休み二人で一緒に街遊び行こうぜ」
「ふぇ?」
「なんだ聞こえなかったのか?次の休み二人で一緒に遊びに行こうって言ったんだよ」
「そ、それでいいの?」
そんなただ遊びに行くだけだなんて……
「あぁ、別にそこまで怒ってる訳じないからな」
「ほ、ほんとに?ほんとにそんなのでいいの?」
もっとこう、相手は中身はともかく体は女子だから、絶賛思春期男子の礼二はえっちなお願いでもしてくると思ったんだけど……
「あぁ。それともなんだ?別のお願いがいいのか?」
「い、いやいや!これでいいです!いやむしろこれがいいです!そ、そうだ!せっかくだし叶奈ちゃんとか綺月ちゃんも誘ってみんなで行こう!」
「ん?聞いて無かったのか千代?」
「え?」
「俺のおねがいは「二人で」遊びに行く事だぞ?」
「え」
「だから、二人で……そうだな、デートに行こうな」
でっ、ででっでっででっ────
「でーーとぉぉぉぉぉぉお?!」
こうして、俺はひょんなことから次の休みに礼二とデートに行く事になったのであった。
ちなみにこのデート発言のせいでラブレターの件が吹っ飛んでしまったのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます