洋服選び
「こっち……いや、こっちの方が…………うーん」
いつもの俺と比べたら派手すぎるか……?いやでも流石にいつもの無地ワンピよりはこういったちゃんとした可愛い服の方が男としては嬉しいし……
「ふぁー……せっかく祝日でお休みなのに、よーちゃんこんな朝早くから何やってるのー?」
「あ、千保お姉ちゃん。起こしちゃった?」
「んーにゃ、トイレ行きたくて起きた。そしたらよーちゃんがブツブツ言ってたから覗いた。そしたらまぁ……気合い充分なお下着ですわね」
「気合い充分なお下着ってなんじゃい!これくらいの下着普通でしょっ!」
「んーでも、そのこの間私が選んであげたレースにちょこっとフリルがある水色の下着、買ったの一ヶ月くらい前だけどよーちゃんが履いてるの初めて見たんだよねぇ」
「確かにお風呂一緒だけどなんで私の着てる下着正確に把握してるの?!」
「だってお姉ちゃんですから!」
「理由になってないっ!というかわざわざどんなの履いてるか言わないでよっ!」
朝早く、それこそまだお日様すら上がってない四時前くらいの時間帯、いつもより明らかに早起きしていた俺は千保お姉ちゃんに言われた下着姿で洋服の散らかった部屋の姿見の前に立っていた。
「んで、どうしてそんな姿で居たのかなー?」
「うっ……」
「綺麗好きでしっかり者なよーちゃんがお洋服散らかしてるのもおかしいしー……」
「うぐっ……」
「何よりもー……その散らかってる服がウチとこーねぇが買ってきてあげたりした可愛いお洋服ばっかりだっ!これから考えるにズバリ、さてはよーちゃん今日デートだな!」
「ちっ、違うもん!デートは明後日……じゃなくて!礼二と二人っきりでお出かけするだけだし!」
「それってデートじゃない?」
「ぐはあぁっ!」
言わないでっ!幼少期の体験とか女の人の大変さとかお胸の保護防具なんかでもうボロッボロだけど、元男としてはこれはっ、これだけは最後のラインなんだっ!
今まで十三年の人生で飛車角金銀全取りされていた男としてのメンタルに王手をかけられた俺は、千保お姉ちゃんのその言葉でまだ夜中と言っても差支えのない時間に声を上げてしまう。
「うるさいぞー。まだ寝てろー」
「「はーい」」
父様起こしちゃった……少し静かにしないと。
「……起こしちゃったね」
「だね、もうちょっと静かにしなきゃ……」
「で、よーちゃんはその当日来ていくお洋服で悩んでるんだよね?」
くぅ……今ので大人しく部屋に戻ってくれたらよかったのに……仕方ない、ここでいくらはぐらかそうとしても意味ないし大人しく話すか……
それに千保お姉ちゃんなら何かいいアドバイスしてくれるかも。
「うん、明後日来ていく服で悩んでるの。それでお姉ちゃん、よかったらだけどさ……」
「うん?」
「お洋服選ぶの……手伝ってくれない?」
「いいよいいよー!お姉ちゃんにまっかせなさー────」
「一体こんな時間に二人してそんなカッコで何をやってるんですか?」
「かあさまっ?!こっ、これはっ!」
「よ、よーちゃんこんなカッコだけど別にやらしいことは!」
「話は聞こえてましたから勘違いはしてませんよ。それより、こんな時間なんですから大人しく寝てなさい」
「「はいっ!」」
「……怒られちゃったね」
「だね。ふふっ、それじゃあ起きてからお洋服選びはやろっか」
「うんっ」
母様に白い目で見られつつも、そんな約束を千保お姉ちゃんとした俺は、しっかりとパジャマを来た後服を片付けて眠りについたのであった。
そして一眠りして起きた後、別にデートじゃないからいつも通りでいいのではと気付き、千保お姉ちゃんと言い合いったのはまた別のお話。
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