保健室のお布団で
時は五月、入学式から約一ヶ月が経過し新入生も新たな学校生活に慣れてきた頃、俺達二年生はというと……
『そこっ!もっとキビキビできんのか!やり直し、最初から行進やり直しだ』
うっへぇマジかよ。これでもう四回目だぞ、勘弁してくれぇ……
「あうぅぅぅ……」
「ちよちー大丈夫?辛そうだけど……」
「大丈夫大丈夫、ちょっと疲れただけだから。ほら、早い所スタート位置に戻らないとまた体育の先生が怒るよ」
体育祭の練習に勤しんでいたのだった。
ーーーーーーーーーー
「で、結局そのまま無理して行進続けて今に至ると……お前なぁ、昔からあんなに体弱くてよく倒れてたのに朝から微妙に体調悪かったなら尚更無理するなよ。ほんっと学ばないよな」
「うっさい。いつも私に勉強教えてって頼ってくる奴に学ばないだなんて言われる筋合いはない」
ぷくぅっと頬を膨らまし、そんな事を言って来た礼二に保健室特有のサラサラとした触り心地のベッドの中から、俺はそう返事を返す。
そう、あの後結局五回目の行進のやり直し中に周りから見ても顔色が悪いとわかる程体調を悪くした俺は、保健室に担ぎ込まれて居たのだった。
「はいはい、貴方たちここは保健室ですよ。静かにしなさい。それに花宮さん、貴女そんなに顔色悪いんだから、夫婦喧嘩はきちんと休んでからにしなさい」
「ふうっ!?」
「あはははは。やだなぁ先生、私達はそんな関係じゃないですよ。ねぇ、礼二?」
「お、おう、そうだな……そうだな」
「?」
「ほんとこの子達面白いわぁー。それじゃあ先生はお昼ご飯食べてくるから、もし何かあったら彼氏くんに職員室まで呼びにこさせてね」
「ちょっ、先生ェ!?」
「はーい」
「千代!?」
ふふふっ、ほんと礼二って反応面白いなぁ。
そう言って立ち去る先生と、体調不良からか若干働かない頭で返事を返した俺にそんな元気にツッコミを入れていた礼二を、俺は少しだけからかってみることにした。
「ふふっ、彼氏くんだってさ。よかったね礼二、こんな絶世の美少女の彼氏に見えるんだって」
「お前自分で自分の事絶世の美少女って……でもまぁ、実際可愛いし」
「ほへ?」
ちょっ、何をいきなり……
「実際、俺が知る中じゃお前程美人な人居ないからな」
「ちょっ、れっ、れーじ!」
ちょっとノリでふざけてみただけなのにっ!
「は、恥ずかしいからその辺で……」
「そんな幼馴染を彼女に出来るなんて、俺は最高に幸せ者だな」
「〜っ!礼二のばかっ」
してやられたっ!こっちがからかうつもりだったのにぃ!
からかうつもりが見事にしてやられ、ニッと意地の悪そうな顔と共にそんな事を言われた俺は、恥ずかしさから捨て台詞のようにそういうと布団の中へ潜り込む。
「はっはっはっ。今回は俺の勝ち、だな。一応先生が戻ってくるまではここにいてやるから、大人しく眠ってろ」
「……はーい」
そして、珍しく礼二に完敗した俺は大人しくその言葉に従うのだった。
布団の中で初めて感じた、ドキッとしたその感覚に戸惑いと赤面している顔の暑さを感じながら。
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