お風呂の戯れ
ふぅー……
「疲れた……」
「よーしならこの千胡お姉ちゃんがマッサージしてあげよう!」
「やだ」
「そんなキッパリ!」
「だって千胡お姉ちゃんのマッサージ痛いだけだもん。それに千保お姉ちゃんのマッサージの方が効果あるじゃんか、実際に」
「うぐっ、確かにそうだけどぉ……」
そう言うと湯船の中で蕩けていた俺は割と大きくなった胸を張り、高校三年生にも関わらず俺よりもだいぶ小さくなった姉を悔しがらせる。
「なになにー?なんかまた面白い事やってんの?」
「千保ちゃん!千代ちゃんがおっぱいないって虐めてくるのっ!」
「いや、よーちゃんと比べたらこーねぇは全く無いでしょ」
「うぐぅっ!」
「とりあえず可愛い可愛いよーちゃんの為に、今日もお姉ちゃんがマッサージしてあげよう」
「わーい」
「ぐぬぬぬぬ……千保ちゃん、今度私にもマッサージ教えてよ」
「千胡おねーちゃん下心丸見えだよー」
「あははっ。でもそっかー……あのよーちゃんがねぇ」
「ねー。最初はあんなだったのに」
気持ちよさそうに俺がマッサージを受けていると、俺のマッサージを始めた千保お姉ちゃんと横でぶくぶく言ってた千胡お姉ちゃんがそんな話をし始める。
「何の話ー?」
「ふふふっ、千代ちゃんは流石に覚えてないかな?」
覚えてない?昔の話かな?
「だってよーちゃんが三歳の頃くらいだっけ?それくらいの話だからねぇ」
三歳の頃?なんかあったっけ……?
「ほら千代ちゃん、銭湯に来た最初の頃毎回すっごい恥ずかしがってたじゃない」
「!?」
「そうそう、しかも恥ずかしいの理由が「おねーちゃんたちとはいるのがはずかしいのっ!」ってねー」
「そっ、それはっ!」
「「可愛かったなぁ〜♪」」
「ヤメロォ!」
あの頃はまだ女性耐性が死ぬ程低かったんだよ!
呑気に尋ねた俺へ意地の悪そうな笑顔を浮かべた姉達にそこそこ大きくなった俺にとってほぼ黒歴史である幼女時代の話を取り上げられ、俺は悶絶してしまう。
「あら、覚えてたの。千代ちゃんやっぱり記憶力いいなぁ」
「そして悶絶してるよーちゃんもまた、いい♪」
「変性癖に目覚めるなバカ姉共!」
「んまっ!なんてお口が悪いのかしらっ!」
「これがきっと反抗期って奴ですわよお姉様っ!」
「「絶賛反抗期中のあんたのセリフじゃないでしょうが」」
「ぅぐはぁっ!」
「せめてお料理とか家事が一人前に出来るくらいになってからそういう事はいいなさいっ」
「「お前は家事全般全滅してるでしょうがっ!」」
「ぎにゃあぁぁ!」
なーに自分から自爆してくるんだこのバカ姉共は。
「でも。もうあれからもう十年くらいかぁ」
「早いもんだねぇ。でもあの頃の恥ずかしがり屋さんの千代ちゃんもいいけど、今の千代ちゃんの方が私はもっと好きー」
「ウチもウチも!もうぎゅーってして離したくないくらい好きやで!」
そう言って相も変わらず抱きついて来る姉達に、俺は苦しいと言わんばかりに腕をぺちぺちと軽く叩いて抱きつきから解放するように促す。
「それで千代ちゃん。今年の身体測定はどうだったのー?身長伸びてたー?」
「うぐっ……」
「む、その反応は今年もダメだったみたいだね」
「ダメじゃないもん!伸びてたもん!……1ミリくらい」
「1ミリってそれ誤差くらいじゃ……っと、そういや来月だっけ?」
「そうだよー」
「そっか、中学校はこれくらいに体育祭あるのか……よし!おねーちゃんも体育祭行ってあげよう!」
「あ!千保ちゃんも行くなら私もいくー!」
あー、これは……もう止めらんねぇ奴だ。というか、呼ばずとも毎年来るでしょうに…………
「ま、これもありか。とりあえずそろそろお風呂上がろっか」
「「はーい」」
こうして、三姉妹のお風呂はゆっくりと過ぎていくのだった。
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