皆で準備

「正直、花宮さんって無いよな」


「何がとは言わないけど、無いよな」


「よし、お前ら一発殴らせろ」


「突然なにっ!?」


「理不尽っ!?」


「うっさい、遊んでる奴が悪いんじゃい。ほら、さっさと運んだ運んだ。キミたち男の子でしょ。私も手伝ってあげるから、早い所運んじゃお」


 という事だから別にこの鉄拳制裁にちょっとナニの膨らみが無いとか言われた事に苛立ったとか、そういった意味があった訳ではございませんことよ。


「「はーい」」


「やっぱり千代ちゃん凄いね。こういう時居てくれるだけで男子は言うこと聞いてくれるし、流石女帝って呼ばれてるだけはあるよね!」


「ねー。しかも頼み事ある程度聞いてくれるし、本当に助かるー」


「はーいそこ、褒めてくれるのは嬉しいけど手が止まってるよ。手を動かす動かすー。そして私は女帝じゃないぞー」


「「はーい」」


 いよいよもって卒業式まであと少しとなり、とうとう今まで音楽室や教室でセリフや歌の練習を体育館でした後、俺はあちこち回りながら後片付けをしていた。


「うーっし俺の方仕事終わったぞー」


「机運び終えましたー」


「お!れーたろーに神井おつかれー!」


「れーくん、神井くんおつかれー」


「おう、ありがとな二人共。んでこっちは……相変わらずみたいだな」


「あれはもう流石というか、やっぱりというか」


「あはははは……今日もちよちー無双でございます」


「だなー。もうちよよんに勝てる子はこの学校に居ないと思うぞ」


「勝てるってなんだよ。でもそういうお前達だってだいぶ凄いけどな」


「あの赤と白の花、三分の一くらい作ったの二人なんでしょ?いい意味で人の事言えないよねぇ」


「えへへへへ、ありがとうだぞ!」


「ちよちーって拘っちゃう子だから、意外とこういう沢山作る作業は時間かかっちゃうから向いてないんだよねぇ」


 そして他の片付けから戻ってきた二人と合流し、会話が盛り上がり始めた四人の元に身長の低さを活かしてこっそりと俺は忍び寄ると……


「ばぁっ!」


「「「「うわぁぁあっ!?」」」」


「ふふーん!ドッキリ大成こーう!」


「んもー!びっくりしたぁー」


「ビクゥってなったぞおい」


「ちよよん……本気でびっくりしたぞ」


「気が付かなかった……」


「わはは。雑談に興じてる貴様らが悪いのじゃ。ほら、もうひと頑張りなんだから働いた働いた」


「「「「はーい」」」」


 ぴょこんといきなり礼二の後ろから飛び出し、見事みんなを驚かせた後そう言って作業に皆を戻したのであった。

 卒業式まで、あと一週間。

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