娘と父
「それでは皆さん、これにて今回の集会は終了です。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でしたー」」」
日も沈み、もう少しで辺りは真っ暗闇になってしまうようなうっすらと暗いこの時間帯、そんな時間に街の中心を流れる川沿いにある公民館にて集会が行われていた。
「花宮さんお疲れ様です」
「おぉ、桜ヶ崎さん!お疲れ様です」
家が真後ろで子供同士の付き合いがあるとはいえ、ウチの店と遠い事もあって最近顔見れてなかったからなぁ。元気そうでよかった。
「いやー、お久しぶりです。いつも息子がお世話になってます」
「いえいえこちらこそ。礼二君には千代がいつもお世話になってます。にしても……やっぱり子供が居ないと普通に喋れるんですよねぇ」
「いやー、こればっかりは。なぜだか子供相手だと全く喋れなくなるんですよね。千代ちゃん怖がってたりしてませんか?」
「大丈夫ですよ。なんなら「物静かで普通にかっこいい」なんて言ってますからね。少し羨ましいです」
「でもどうせ花宮さんが一番ってその後抱きつかれたりしながら言われてるんでしょう?」
「あ、分かっちゃいました?」
「分かっちゃいましたも何も、貴方達の仲の良さを知らない人はこの街に居ませんよ」
「そんな大袈裟な。あ、そういえば奥さんの方、最近どうです?」
「あぁ、優美ですか。いやぁもうお腹も立派になって、まぁやっぱり妊娠八ヶ月、もう出産目前という事もあってキツいのか最近はちょっと不機嫌ですけどね」
俺がそう言って桜ヶ崎さんに去年の六月に妊娠が分かった奥さんである優美さんの事をそう問いかけると、桜ヶ崎さんはそう言いつつも嬉しそうに答えてくれた。
「はははっ、でもそんな状態の妻を守るのが夫たる我々の仕事ですからね」
一重さんが初めての子供だった千胡と弘紀を身ごもっている間、大変だと分かってたのにいつも通り家事を任せてたら大喧嘩したもんなぁ。懐かしい。
「できるだけ家事とかも手伝ってあげないとですね。所でそろそろそちらも五人目いいのでは?千代ちゃんももうお姉さんな歳になりましたし」
「いやぁー、経済的には五人目もありなんですが千代が四歳の時に妻に「これ以上産めと言うなら、今の三倍は稼いで下さいね」って言われてしまいまして……しかも真顔で」
あの真顔は怖かったなぁ。いや、でも千代に手伝って貰い始めて収入増えだしたし……今なら行けるか?
「あはははは……でもそうかぁ。もううちの子も小学六年生かぁ」
「早いもんでしょう?」
「えぇ、本当に。もう驚く程一瞬でした」
「子供の成長ってなんであんなに早いんでしょうねぇ」
「でもまぁ、大きく健康に育ってくれればそれが一番ですよ。でももう六年生か、赤ん坊の頃もですが小学校もあっという間でしたね」
「中学校は今の半分ですよ桜ヶ崎さん」
「きっともっと早いんでしょうねぇ……あーでも反抗期怖いなぁ。花宮さんの所は今次女の千保ちゃんが中学校でしたっけ」
「ですね。絶賛反抗期中です。千代もあぁなるのかなぁ」
今は父様父様ってあんなに甘えてくれてるのに……寂しいもんだなぁ。
「いやー、あの千代ちゃんに限っては……」
「あ!父様いたー!」
「そんな事無いと思いますよ。なんたってあんなに笑顔で駆け寄って来るくらい、お父さんの事が大好きなんですから」
「……ですね」
「父様帰ってくるのおそーい!」
「ごめんごめん。帰りにラーメン屋さん連れてってあげるから許しておくれ」
「ラーメン!やったー!」
「それじゃあ桜ヶ崎さん、私はこの辺で」
千代が来たからか、無言になってしまった桜ヶ崎さんに俺はそう挨拶をすると千代と手を繋ぎ仲良く帰路へとつくのだった。
千代が卒業するまで、後四日。
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