終わりの時期
「きりーつ、きをつけ、礼」
「「「「「ありがとうございましたー」」」」」
ーーーーーーーーーーーー
「いやー、今日も疲れたねぇ」
「だねぇ」
「千代なんてすっげぇ張り切ってたもんな。無理して風邪ひくなよ?まだまだ寒いんだから」
「分かってるよー。それに流石にそこはきちんと管理してるんで大丈夫でーす」
季節は冬の真っ只中、晴れだと言うのに先日積もった雪がまだ道路端のあちらこちらに積もっているようなある日の事、俺達四人はすっかりくたびれてしまったランドセルを背にそうだべりながら歩いていた。
「にしてももう後半月かぁ……早いなぁ」
「ついこの間まで夏休みだったのにねぇ」
「ちよよん年寄りみたいなセリフだな!」
「うっさい、そう言う叶奈ちゃんはさっさとセリフ全部覚えて毎回毎回「次のセリフ……なんだっけ?」って聞いてくるのやめなさい」
「うぐっ!ま、前向きに努力するぞ!」
まだ小学生のだからいいものの、中学高校はちゃんと覚えておくれよ。
「でも」
「あははっ、でも本当にあっという間だったねぇ。皆でいっぱい遊べて楽しかったなぁ……」
「綺月ちゃん……」
そうどこかしゅんとして言う綺月ちゃんに、礼二や叶奈ちゃんとワヤワヤ盛り上がっていた俺は綺月ちゃんに心配そうに声をかけると……
「卒業しても皆綺月ちゃんのお家の方にある中学校に行くだけだから!心配したりする必要ないよ!」
「もう!雰囲気ぶち壊しだよちよちー!」
「あはははは、ごめんごめん」
綺月ちゃんの肩に手を置き、笑顔でぐっと親指を立てながら、せっかくの雰囲気なんて関係ないとばかりに小学校を卒業した所で何も変わらないという事実を言ってのける。
そう、あの夏休み明けから数ヶ月が経ち、季節はもう二月の終わりという、この少し長く感じた小学校生活も後二週間程度でおしまいになる時期になっていた。
「でもほんと、もう卒業だもんな。あっという間だったよなぁ」
「あ!れーたろーも年寄りみたいなこと言ってる!」
「だーれが年寄りだ!」
「ふふふっ、でも卒業するのは本当だし、せっかくだから何かしたいよねー」
うーん、小学生の卒業式なんて記憶から抹消されるレベルで忘れる物だし、別にやらなくていい気がするけど……
「ご馳走食べようぜ!ご馳走!」
「おー!ご馳走いいな!叶奈もそれがいいぞ!」
「えーっ。どうせ皆夜ご飯ご馳走だろうし、私別の事やりたーい」
「例えば?」
「んーと……えーっと…………桜の木にの彫刻刀で名前書くとか?」
一生の内体験出来るのは四回が精々な超大規模イベントなんだ。例え皆が忘れたとしても楽しむべきだし、それに皆こんなにも楽しそうなんだ。
「邪魔する方が無粋って奴ですな」
それに、万が一皆が忘れたとしても、俺が覚えてれば良いだけの話だしな。
「ん?ちよちー何か言った?」
「んーん、何も。所で皆、それなら私にいい考えがあるんだけど……」
まだまだ寒い二月の終わり、俺達が卒業するまで後二週間。
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