恒例行事
夏休みも終わり、最初の一週間が何とかやり過ごした学生達で賑やかな日曜日のお昼過ぎ。
ガヤガヤ……ザワザワ……
「……遅いなぁ」
駅の入口付近のベンチで、胸にワンポイントある半袖のTシャツに水色の膝丈スカート姿の俺は足をパタパタさせながらとある人を待っていた。
もう待ち合わせの時間から二十分は経つのに……
「はぁ……せっかくお昼ご飯抜いてきたのに…………ってやっと来た」
「お待たせー、待った?」
「先生おそーい!大遅刻だよ!」
「ごめんごめん、ちょっと妹に捕まっちゃってて。今日は二つ頼んでいいから許して?」
「ほんと!?やったー!」
「ふふふっ、それじゃあ行こっか」
「はーい!」
ーーーーーーーーーーーー
「ん〜♪」
あま〜い♪美味し〜い♪やっぱりあじさいの甘味は格別だぁ〜♪
「あじさいのケーキは天下一〜♪」
「ふふふっ、ですってマスター」
「……」
「照れてる照れてる♪」
にまーっと幸せで緩むほっぺを手で押え、足を喜びでパタパタさせながらそんなセリフを吐いた俺は、マスターをからかう先生を前にもう一口ケーキを頬張る。
そう、今日は以前より何故か定期的に行われている先生との甘いものお出かけデートの日なのである。
「ふぅ……」
「満足した?」
「満足ぅー……」
いやー、もう食べた食べた。お腹いっぱいに食べたよー。
「ふふふっ、それは良かったわ。そういや花宮さん、夏まりの時に屋台出したんですってね」
「はい!そうなんですよー!もうお客さんいっぱい来てくれて楽しかったです!」
「花宮さんが楽しめてたみたいでよかったわ。でも貴女はまだ小学生なんだし、そういった事をやる時はお父さんとか保護者の人と一緒にやってくださいね?これは先生としてのお願いです」
一応陰ながら父様めっちゃ見守っていたけど……先生が求めてるのはそういった事じゃないからな。
「はい、わかりました」
「よろしい。所で花宮さん、聞いてほしいんだけど……」
お、今回も始まるか。
「もーみんなの分の夏休みの宿題の採点が多くて多くて大変なのよー!」
「あはははは……」
先生の愚痴ターイム、毎度の事ながらそんな事教え子相手、しかも小学生にしていいのだろうか。ほら、マスターもまたかみたいな目で見てるよ先生。
「今日もさ!クラスの男の子達の宿題採点してたんだけど、答え写してるのばっかり!分かるからね!?簡単に分かるもんだからね!」
話していいのか先生、それは話していいのか先生!というかやっぱりバレるもんなんだな、そういうの。真面目に解いててよかったぁ……
いつも通り始まった愚痴タイムへと突入した先生を前に、俺はちうーとマスターからボソッと奢りと言われ差し入れられたオレンジジュースを飲みつつそう思うのだった。
こうして平和な日々はゆっくりと過ぎていき……
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