最後のオチは
さて……大きな数字はなんとか全員から吐かせた。2も1もジョーカーもここら辺が全部出切った今なら……!
「一番大きいカードで!9!」
「えぇっ!ちよちーそれが一番なの!?」
「えへへ、実はそうなんだ。で、皆出す?」
「僕はパス、伊部さんは?」
「あー、残念ながら叶奈もパスだぞー」
「俺もパスだな、綺月ちゃんは?」
「私もー」
「よし!それじゃあここに5を4 四枚!全員手札四枚無いから出せないしこのまま流して、その4を出して上がりっ!」
パシンと最後に4を出すと、なんとか弱すぎる手札で一番上がりを勝ち取った俺はバンザーイと手を挙げた拍子に布団に倒れ込み、むぎゅうっとぬいぐるみに抱きつく。
「にしても、本当によくあんな酷い手札だったのに勝てたよなぁ」
「んむふふふ、私が本気を出せばこんなもんよ」
正直勝てるとは思ってなかったけどな。まぁ運も実力って事で。
「でも礼二もまだまだだねぇ。あんな2が三枚もある最強の手札だったのに結局富豪なんて」
「うるせぇ!順番的にまともに出せなかったんだから仕方ねぇだろ!」
「まぁ最後の最後だったしねぇ……ふぁー……」
扇風機の風が気持ちいい……っと、いけないいけない。危うく寝ちゃう所だった。これからの二試合目からが盛り上がりどころだって言うのに……あ、そうだ。
「れーじー……」
「ん?どうした千代」
「ちょっと来てー」
「なんだなんだ」
「ん」
「え?ちょっ、えっ!千代!?」
「喋るなうるさいじっとしてろー」
ちょいちょいとまだ大富豪中の三人を見ていた礼二を呼んだ俺は、突然の俺の行動に慌てふためく礼二を他所にそのままぽすっと礼二の胡座の中に座る。
こう密着してれば暑くなるし、流石の俺も寝るこたぁないでしょう。
「どうかしたのかい?桜ヶ崎君」
「い。いや!なんでもねぇ!というかお前、そのままだとまた負けるぞ」
「うそぉ!?」
「くわははは!気付くのが遅かったな神井君!この勝負叶奈の勝ちだ!」
「盛り上がってるなぁー」
正直皆の手札も残り少ないタイミングで上がったしすぐ終わると思ってたんだけどなぁ。
「盛り上がってるなぁーじゃねぇよ。早く退け、というか眠いなら寝ろ」
「やだぁー、これからがいい所だもーん」
「んな事言ったって、めっちゃ船漕いでるじゃねぇか」
「んなわけ……ぬぁるかぁ!」
「今思いっきりカクンッて行ってたぞ」
「いって……にぃゃあい!」
などと言いつつも自分でもわかる程頭をカックンカックンさせていた俺は、唐突にすぅっと眠気の覚めていく感覚になんとか耐えきったのかとほっと安堵する。
「ふふーん!どーだ!眠気に勝ったぞ!」
いっつも眠気に負けてるわけじゃねーんだよぅ!
「まさかあの千代が眠気に勝つだなんて……」
「なんだって!?ちよよんが眠気に勝ったのか!?」
「うそっ!」
「そんな馬鹿な!」
「それが勝ったんだなぁー!どうだ!驚いただろーう!」
驚くみんなを前に俺はそう言うとすっと立ち上がると、ふふんと胸を張り────
ーーーーーーーーーーーー
「どーだぁ……おどろいた……ろぉ……ふへへ……んむぅ……」
「一体どんな夢見てんだこいつ……」
そう目を閉じて礼二に身を任せ、夢の中で俺は高笑いを上げていた。
「船漕いでると思ったらカクンッて寝たねぇ」
「ふふふっ、ちよちーぐっすりだ♪そんなにれーくんの所が落ち着いたのかな?」
「いいなぁ桜ヶ崎君……僕と変わってくれないかい?」
「ぜってぇ変わらねぇ。ったく、こいつもこいつで……」
「んんぅ……へへへ……れーじだー……すぅ……」
「ぐっすり寝やがって」
「とりあえずれーくん、ちよちー布団に横にしてあげて」
「そうだな」
「うぇへへ……」
凄いんだぞー……
こうして、俺は自分でも知らぬ内に夢の世界へと旅立っていたのだった。
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