いつかを叶える時来る

「ふーんふふーん♪」


「今日は今までにないくらい上機嫌ですね千代」


「うん!だって初めてだもん!」


 家に皆を呼んでお泊まり会っ!前世は勿論今世でも自分でやった事はないからね!いつかやって見たかった事が出来る……んー!楽しみっ!


 笑顔の母様を前に、俺はそう言うと持っていたぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめ、ぴょんこぴょんこと飛び跳ねる。

 そう、今日は以前からいつかはやろうと楽しみにしてたお泊まり会なのだ。


 ウチは兄妹姉妹に両親祖父で七人の大所帯だからね。

 今日みたいなあの馬鹿兄がしばらく帰って来なくて、お姉ちゃん達も部活の合宿とかで居ないという滅多にない機会でもないとお泊まり会なんて開けないんだよ。


「たーのしみだな〜♪」


「ふふふっ。本当に楽しみなのね。それで、今日は誰がお泊まりに来るの?」


「えっとねえっとね。叶奈ちゃんでしょ、綺月ちゃんでしょ、後礼二と神井くん!」


「あら、礼二君と神井君も来るの?てっきり女の子だけかと思ってたわ」


 最近女の子同士ばっかりでつるんでたからね、たまには男達とも一緒にと思った次第なのですよ。

 それに、俺の精神衛生的な物の為にも是非とも二人には来てもらわねば困る。


「礼二と神井くんには悪いが、俺の為に人柱となってくれ」


「…?とりあえずそれだけ来るなら用意しなきゃですね。三人までなら千代の部屋でもなんとかなりそうですが……うーん、どうしましょう」


 そうなんだよなぁ……叶奈ちゃんの部屋と違って俺の部屋は小さいし、しょーうじき四人も布団を引けるスペースは無い……最悪俺と礼二が同じ布団で……んお?


「おぉぉぉぉー……!」


 突然の浮遊感!


「はっはっはっ、千代は相変わらず軽いなぁ。とりあえずそれなら寝泊まりは居間でしたらどうだ?十分なスペースがあるだろう」


「いいのですか浩さん?それにお義父様もなんと仰られるか……」


「父さんなら帰ってくるのが夜中になるし、大人しく寝てる分には別に良いって言ってたから大丈夫さ。それにそろそろ……」


「きゃっ!んもぅ貴方ったら……千代がいる前で」


「俺も相手して貰いたいからな」


 おぉう、あいっ変わらずこっちもラブラブあちちな夫婦です事。


 俺を挟んでピッタリひっつきイチャつき始めた両親を前に、父様に抱っこされていた俺は頭上でのそのやり取りに微笑ましさを覚えながらも、娘のいる前でするなと苦笑いを浮かべる。


「じゃ、今日はそういう事でいいか?」


「……全くもう、仕方ありませんね」


 あ、母様ノリノリだ。その表情はノリノリな時の表情だ。後ろで一つ結びにしてる髪の毛が尻尾みたいに揺れてる気がするぞ……というか流石に五人目は無いよな?


「という訳で千代、父様と母様も今日の夜はお出かけだ。出来れば晩御飯前には出たいが……」


「流石にそれは……」


「大丈夫だよ母様!私がお姉ちゃん達より料理上手なの知ってるでしょ?」


「まぁ確かにそうだけど……」


「だから大丈夫!あ、でも材料あるかな。後で買い出し行かなきゃ」


「ふふふっ。それじゃあ材料は私が買ってきてあげますから、千代は御出迎えの準備を進めててください」


「母様いいの?」


「えぇ、勿論ですよ」


「ありがとうかーさまー!」


「ふふふっ♪さっ、そうと決まればお友達が来ちゃう前に買い物とか済ませちゃいましょ」


「はーい!」


 こうして、初めて自分主催のお泊まり会が幕を開けたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る