お風呂で後日談

 カコン。


「ふゅー……」


「あははっ。よーちゃん溶けてる」


「だってきもちいいんだもーん」


 ふやぁーっとタオルを巻いた頭だけ出し、お湯の中で力を抜き身体を大の字に広げていた俺は、横に座った千保お姉ちゃんに体を抱き寄せられながらそう言う。


「むふふふふ、きもちいい?」


「ふにふにのぷよぷよでさいこー。さすが千保お姉ちゃんのおっぱいまくらー」


 片っぽで一キロくらいありそうな重さと大きさしてるだけの事はある。


「ふふーん。千代ちゃんも中学生になったらこれくらい大きくなるよー」


「ほんと!?」


「ほんとほんと。あーでも私が大きいから確実にチャンスはあるだろうけど、もう一つの可能性もあるからなぁ……二分の一だね」


「だぁーれが二分の一よ」


「いでででででででで!」


「あ、千胡お姉ちゃん」


「ダメよ千代、こんな馬鹿の言う事まともに受けちゃ」


「ぬゃーい」


 あー、おっぱいまくらがー。でも千胡お姉ちゃんの抱っこもきもちいいー。


「よーちゃん持ってかれた……にしても、昨日は大変だったねぇ」


「だねぇー。まさか仁奈ちゃんが家に泊まって行くとは思わなかったよ」


 そう、あの後このまま帰れば遅くなるし雨も強くなってきてた事もあり、一日だけ仁奈ねーちゃんが家に泊まっていく事になったのだが……

 仁奈ねーちゃんの提案で俺達三姉妹と仁奈ねーちゃんが一緒に寝ることになり、恋バナしたがるわ遊びたがるわ抱きついてくるわと全然眠れなかったのだ。


 まぁ俺は途中で寝落ちして記憶ないんだけどさ。とりあえず朝起きたら右も左も抱きつかれててすっごい暑かった。


「それに昨日大雨でお風呂行けなかったからねー。もうベトベトで最悪だったよー」


「まぁまぁ、仁奈ちゃん自体悪い人じゃないし、それに今日はゆっくり入れてるんだし。ゆっくり暖まろ?」


「「だねー」」


「ふふふっ、仲良しさんだこと」


「あ、かーさまー」


「あらあら千代ったら。仕方ないわねぇ」


「えへへへへー」


 やっぱり母様が一番〜♪安心感が違うのだよ、安心感が。


「千代ちゃんの浮気者ー!」


「あんなに愛し合ったのに……よーちゃん酷いっ!」


「かーさまー。おねーちゃんたちがいじめてくるー」


「そうねー。悪い子達には明日のお皿洗いをやってもらおうかしら」


「「ごめんなさい」」


 そんなやり取りをしつつ、姉達の元を離れた俺はふにゃあっと湯船の中にある母様のお膝の上できゅっと抱っこされながら幸せいっぱいでお風呂の温かさを楽しみ────


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ほら、千代ちゃん。飲める?」


「のめうー」


 まだかっかっしてるのが分かるほど火照った体で千胡お姉ちゃんからフルーツ牛乳を受け取った俺は、ぺたーっとその牛乳瓶に頬ずりしてから蓋を開け中身を飲む。


「たはー!うまいっ!」


 やはり風呂上がりの牛乳はうまいっ!しかもフルーツ牛乳だから倍!それにプラスで女の子になって余計甘いもの好きになったからか更にうまいっ!


「おっ!千代ちゃん今日もいい飲みっぷりだねぇ!もう一本行っとくかい?オマケするよ」


「行っちゃう!」


 おじちゃんのオマケ!貰っちゃうっ!


「もぅ、そんなに一気に飲んじゃって。お腹壊しても知らないよ?というか壊すからおかわりはだーめ」


「えー」


「お姉ちゃんが言う通りよ千代。さっきまでのぼせてたんだし、ただでさえ千代は体が弱いんだから」


「はーい」


 そう言いながらぴーんと背伸びして風呂屋のおじちゃんに空になった牛乳瓶を渡し、手を振って母様と手を繋いだ俺は風呂屋を後にしたのだった。

 こうして、仁奈ねーちゃんの一件は完全に幕を閉じ、俺達の平和な日は過ぎていくのであった。

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